ベトナム・ホーチミンで居合道教室を開き、居合道を通して日本文化を伝える日本語教師インタビュー
更新日:2013年12月30日 (取材日:2013年12月22日) / ライター: aki
日本には茶道、柔道、剣道、そして居合道と様々な「道」があります。居合道も初期には居合術と呼ばれていたようで、「術」だったものが「道」へと分化した武道は多くあります。「術」は技を高めることに主眼が置かれているのに対して、「道」はその技を磨く過程を通じて人格を高めるという人間形成という目的があります。その「居合道」をベトナムで教えている日本語教師がいると聞き、話を聞きに行ってきました。
目次
ベトナムで居合道
居合道を教えることになったきっかけ
そもそも居合道を教えることになったきっかけは「先生の日」に演武を行ったことでした。先生の日はベトナムの記念日であり、生徒が先生に感謝する日です。そこで生徒の前で居合道の演武をしたところ、是非教わりたいという声があったそうです。 元々外国人に日本文化を伝えたくて日本語教師になった井浦さん、居合道を通して日本文化をの美しさやその背景を伝えることができると思ったのでしょう。
居合道とは
冒頭で「術」と「道」の違いについて書いたように、人間形成という意味も含まれているのが武道。さらに、居合道は剣道などとは違い相手に対して攻撃をするものではなく、敵が攻撃してきた時にどう対処するかという武道です。座った状態から剣を抜き、相手を倒し、剣をしまうところまでの美しさや、強さなどを競います。勝敗は型の正しさや間合い、気迫などによって決まり、その中で居合道ならではの作法や、敵を斬った後の動きまでもが評価されるという特徴があります。
居合道の稽古
稽古は5区にあるホーチミン市師範大学で毎週日曜日の朝8時から始まります。稽古の時間は1時間。3月から居合をしている2,3年生が8時から、9月以降に始めた1年生が9時からの稽古で、約10人が居合道を習っています。 驚くことに、居合道稽古を始めてから辞めた生徒はおらず、皆が今まで続けているそうです。いつもは笑顔の井浦先生も稽古中はとても厳しい指導をしており、生徒もそれを望んでいるかのように真剣に取り組んでいました。
居合道は挨拶から始まる
朝8時、いよいよ居合道の稽古の始まりです。稽古は挨拶から始まりました。「先生に礼、正面に礼、お互いに礼」という掛け声とともに、床に正座して礼を行います。1人遅れてきた者がいたのですが、稽古に合流する前に皆で「礼」。この徹底した様子に、この教室では単なるスポーツや遊びではなく「道」を教えていることに気付かされます。本来はどんなスポーツでもフィールドに入る前に礼をするものですが、最近は日本人でも礼をしないことが増えてきているように感じます。その中でベトナム人が呼吸のあったとても丁寧な礼をしているのは感動しました。
居合道稽古の始まり
お互いに礼を交わしたあとに居合道の稽古が始まりました。まずは念入りに準備体操を行います。そして素振り。生徒によりレベルはバラバラですが、皆真剣に取り組んでいました。 井浦先生も生徒が型を外れていると事にはすぐに気づききめ細かく指導をしています。見学しながらちょっと体を動かしてみましたが、なかなか思うようなきれいな動きはできません。この基本とも言える素振りを繰り返してこそ動きが身につくのでしょう。ややもすれば飽きてしまいより実践的な練習がしたいという生徒がいそうなものですが、より良いフォームを目指して練習していました。
居合道基本の12の型
素振りの後は「型」の練習でした。居合道には12本の型があるそうで、上にも書きましたが、この12本の型をいかに正しく演武するかというのが重要なのです。1~6本目の型は既に練習していたようなので復習し、7、8本目の型を新しく練習していました。「右の者を斬り、左の者を斬り、前の者を斬る。そして血を振り落としてから納刀。」というような型の説明をして実演したあとにはまずは足の動きの練習。こうした地道な練習が上達の鍵なんですね。何回かやっているうちに身についてきているようでした。
あっという間に1時間の稽古が終わってしまいました。ずっと見ていても全く飽きないくらい皆真剣に取り組んでいますし、何より演武をしている姿がとても美しいのです。
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aki
旅をするように生きていたい、そう思っていたら気づくとホーチミンにいました。本業の傍ら、ベトナム観光・生活情報ナビ、Samurai Cafe Saigonをやったりしています。ベトナム・ホーチミンから、日本とは一味違うベトナムの日常をお届けします。