【ベトナムビジネスQ&A】所得税確定申告の際に外国税額控除を適用する手続きについて教えて下さい
更新日:2014年10月17日 / ライター: 石川 幸- Ko Ishikawa - : AGS代表
前回は短期滞在者免税制度を利用したい場合の必要書類や申請方法についてご説明いたしました。今回は逆に、ベトナムで所得税確定申告を行う際に、日本で納税した額を控除できる外国税額控除を適用する方法について、この制度の概要と適用のために必要な書類についてご説明致します。
外国税額控除とは?
制度概要
外国税額控除とは、国際的二重課税の事後的な排除を目的とした制度です。全世界所得により計算された納税額から、外国(居住者と認定されている国の外国)で納付した同種の税額について控除するものです。
例えば、ベトナムで居住者扱いのものはベトナム国で所得税を納付します(外国人は確定申告を行います)。次に、この居住者が日本国内源泉所得を有する場合、日本国内源泉所得は日本でも課税されるため、日本とベトナムの双方から課税を受けることになります。つまり、国際的二重課税が発生します。この状態を事後的に排除する為に、日本で納付した税額を、ベトナムでの所得税確定申告の際に控除するというものです。
しかし、控除限度額が定められている為、注意が必要です。
外国税額控除の限度額
1と2を比較し、いづれか少ない金額が控除限度額となる。
- 国外源泉所得/全世界所得 ×全世界所得により計算された所得税額
- 実際支払額
外国税額控除を受けるための必要書類
- 控除対象となる日本で発行された納税証明書
- 上記納税証明書ををベトナム語に翻訳したもの(ベトナム翻訳会社の印鑑必要)
留意点
外国税額控除を適用する為には納税証明書が必要ですが、日本側で納税証明書を発行してもらえずに、外国税額控除を適用できないというケースも散見されます。その場合には、源泉徴収票で代用できないかというお客様もいらっしゃいます。源泉徴収票で受理をされたケースもありますが、それは源泉徴収票でも問題ないということを担保するものではありません。あくまで規定上は納税証明書が必要ですので、後の税務調査等で覆されるという懸念もあります。
また、オフィシャルレターによると、①外国税額控除は所得税確定申告時に一括控除する方法と②月次で毎月控除する方法とが認められています。しかし、月次で控除する方法は、毎月日本の税務署から納税証明書を発行してもらう必要があり、実務的な困難性を伴います。その為、所得税確定申告時に一括控除する方法が一般的となります。
外国税額控除を適用できる場合とできない場合とでは納税額に大きな影響を及ぼすため、十分な注意が必要となります。
ライター情報
石川 幸- Ko Ishikawa - : AGS代表
1992年一橋大学商学部、2008年慶應ビジネススクール(KBS)卒。旧富士銀行・みずほグループで約13年銀行員として勤務。経営者を目指して銀行を退職。2007年KBS在学時に、ベトナム(ベトナム人、現在のビジネス)と出会う。2008年に、井上とともにAGSを創設。経営者として現在6年目であり、日々経営や事業成長と向き合っています。