【ベトナム税法解説】第1回 入国初年度の課税期間について (通達111例題3)
更新日:2015年9月21日 / ライター: 石川 幸- Ko Ishikawa - : AGS代表
このコラムでは、ベトナム税法について、通達やオフィシャルレターといった公式な文書の例題を解説とともにご紹介いたします。これにより、具体的な適用場面をイメージしながらベトナム税制を学ぶことができると考えています。
今回は、ベトナム個人所得税について、通達111/2013TT-BTCから課税期間に関する例題3を解説いたします。
《例題3:入国初年度の課税期間について》
Bさんは2014年4月20日に初めてベトナムに来た外国人です。2014年12月31日までのベトナム滞在日数は130日で、2015年4月19日までのベトナム滞在日数は合わせて65日です。第一回の課税期間は2014年4月20日から2015年4月19日までとなり、第二回の課税期間は2015年1月1日から2015年12月31日までです。
《解説》
例題3は、駐在員等の外国人居住者がいつから納税義務を負うのかについて規定しています。この例題を理解するため、居住者と非居住者について、また居住者の課税期間について理解する必要があります。
居住者と非居住者について
居住者の条件は同通達第1条に定められています。
- 暦年でベトナム滞在が183日以上、あるいはベトナム入国から連続する12ヶ月でベトナム滞在が183日以上となる個人(通達111/2013/TT-BTC号第1条1項a点)
- 一時滞在許可証(TRC:temporary residence card)等を持つ外国人(通達111/2013/TT-BTC号第1条1項b.1.2点)
- 183日以上の期間で住居を借り入れる個人(通達111/2013/TT-BTC号第1条1項b.2点)
- 当該住居にはホテル、ゲストハウス、オフィス等が含まれ、本人が借り入れるか雇用主が借り入れるかについては問いません。
- 他国等、複数の箇所に住所がある場合でも適用されます。
これらの条件に当てはまらなかった場合、非居住者となります。183日という日数はパスポート等、入国管理局の証明に基づきます(通達111/2013/TT-BTC号第1条1項a点)。
居住者はベトナム領土内外の所得(いわゆる全世界所得)によって課税される一方、非居住者はベトナム領土内で獲得した所得について課税されます。そのため、当該判定は納税額に大きく影響します。
居住者課税期間について
非居住者はベトナム領土内で所得があった場合に課税される一方、居住者の所得についてはいつからベトナム所得とされるかが問題となります。
居住者の課税期間は原則として暦年(1月1日から12月31日まで)となります(通達111/2013/TT-BTC号第6条1項a点)。ただし、駐在員は通常、暦年の途中からの赴任となるため、例外的な取り扱いに注意する必要があります。下記条件を2つとも満たす場合、最初の課税期間は入国日からの12ヶ月となります。
- ベトナム滞在が暦年で183日未満である場合
- ベトナム入国から連続する12ヶ月で183日を超えた場合
例題3におけるBさんは2014年度のベトナム滞在が183日未満であったものの、入国日である2014年4月20日から2015年4月19日までの滞在が183日を超えています。そのため、これら2つの条件に該当し、初入国日である2014年4月20日からベトナム居住者として申告・納税する必要があります。
なお、最新の通達119によると、日本からの駐在員につき、居住者がベトナムで申告しなければならない所得はベトナム入国月に獲得した所得からとなります(通達119/2014/TT-BTC 第2条本文)。これにより、暦年で居住者と判定された場合でも、国際的な二重課税排除の観点から、入国月からの申告でよい(1月1日に遡らない)と解釈されています。
ライター情報
石川 幸- Ko Ishikawa - : AGS代表
1992年一橋大学商学部、2008年慶應ビジネススクール(KBS)卒。旧富士銀行・みずほグループで約13年銀行員として勤務。経営者を目指して銀行を退職。2007年KBS在学時に、ベトナム(ベトナム人、現在のビジネス)と出会う。2008年に、井上とともにAGSを創設。経営者として現在6年目であり、日々経営や事業成長と向き合っています。