ベトナム・ハノイ近郊の村で働く日本人インタビュー~JICA(青年海外協力隊) 浅田さん~
更新日:2016年2月24日 (取材日:2016年1月13日) / ライター: 泊 和哉 - Tomari Kazuya - : JAC Recruitment Vietnam Co., Ltd.
現在、JICAの青年海外協力隊としてご活躍されている浅田さんにインタビューをしました。ベトナム・ハノイから西に45kmに位置するドンラム村で村人の収入向上のために活動をされています。浅田さんがされている具体的な支援内容や、生活環境、現地の方との掛け合い、今後の将来像などをお聞きしました。
目次
なぜJICAなのか
Q. 転職しようと思ったきっかけ
不動産ディベロッパーとして働くことは好きでした。しかし、不動産関係はメーカーと違い、海外展開が遅れている分野でもあります。このままでいると、海外に進出する機会がないと感じ、転職を決意しました。
Q. JICAに決めた理由
転職を考えたのですが、求人を探すと、なかなかいい条件のものが見つかりませんでした。熟慮の結果、転職より先に実力をつけることが先だと考え、青年海外協力隊への受験を決めました。一見回り道のようですが、今思えば、厳しい環境に身を置いて、自分を鍛え直したかったという動機もあったのかもしれません。
具体的な支援内容
Q.具体的にどんな支援をしていますか?
ハノイ中心から45km西に位置するドンラム村という歴史的な街並みが残る農村で活動をしています。人口は約7000人です。
生活面は、日本に比べれば、なにもかにも厳しい状態です。予防接種や医療体制はJICAの制度として整っていますが、基本的に現地の人と同じ生活水準で生活しながら、住民の収入向上のための支援をしています。仕事や生活で使う言語は、ほぼ100%ベトナム語です。派遣前に70日の語学訓練を中心とした合宿が国内でありましたが、もちろんそれだけではできるようになりません。ですので、赴任してしばらくの間は、必死にベトナム語を勉強しました。
結果的に農業の6次産業化をやっていることになっていた
生産者 加工 流通 → すべてを網羅することで全部の利益が収入につながる。
日本でも注目されていますが、生産者(第1次産業)が加工(第2次産業)から流通販売(第3次産業)まで一貫して行う体制のことです。農民が生産だけ行うと1の収益しか得られませんが、加工まで行うと2の収益、流通まで行うと3の利益を得ることができます。つまり、1×2×3=6倍の経済効果につながります。
具体的には、村人の収入向上に関わる仕事をしています。まず、私の強みは何か?と考えたときに、「原料を加工して付加価値をつけ、利益をあげられるノウハウを知っていること」がありました。これは、前職の不動産デベロッパー時代に得た知識です。そこで、前任者が開発した生茶クッキーを使って村人のために何かできないかと考えました。このプロジェクトは、村の特産品である茶葉を練りこみ、オーブンを使ってクッキーに焼き上げたもので、日本人のパティシエさんが監修しています。私が赴任したころには、おいしい味とおしゃれなパッケージに仕上がっているのにもかかわらず、ほとんど売れていませんでした。その理由は、村の地味な商店にただ置いてあるだけ、という販売方法にあります。そこで私は、ハノイの商店に卸すことを考えました。理由は単純で、村よりハノイのほうが多く観光客が来るからです。また、ふだんの何気ない会話の中から、ハノイには魅力的なお土産が少ない、という声も耳にしていました。需要はあるのに、供給が追い付いていない。そんな仮説をもとにハノイの商店に売り込んだ結果、成功しました。今ではハノイや月に数百個売れていて、人気商品になっています。村でも徐々に売れてきているので、もっと増やしていきたいです。
当初、特に意識はしていなかったのですが、結果的に農業の6次産業化のお手伝いをしていることに気付き、驚きました。
ベトナム人との掛け合い
Q.一緒に働くようになってわかったこと
日本人だと当たり前のように考えてくれることでも、ベトナム人には伝わらないことがあります。例えば、何か指示を与えたときに、日本人はできないことを、簡単にできないと返さずに、まず指示を与えた側の目的を考えて、その目的を達成するために工夫します。それとは逆に、ベトナム人は、できないものはできないと、はっきり拒絶する傾向があります。例えば私が「砂糖の甘みがきついので砂糖を使わずに、クッキーは作れないだろうか」と提案したとします。するとベトナム人の生産者からは「砂糖を使わずにクッキーは作れない」という回答が返ってきます。一方、日本人の場合だと、「甘みをゼロにするのは難しいけれども、砂糖の変わりにサトウキビを使ってみるのはどうだろうか」と代替案を提案する発想が自然と出てきます。「できない、ではなく、できるように工夫しよう」という考え方がどうしたら伝わるのか。今の課題であり、気づいたことです。
Q.ベトナムの国民性や性格の特徴をどう感じていますか?
しぶとい。ベトナム人は、外の喧騒の中で震えながらお茶を飲んだり、バイクの上で寝ている人がいますよね。寒いことやうるさいことや汚いことへの耐性に強い点で、しぶといという言葉で表現したいです。言葉を変えると、あるがままを受け入れているとも表現できます。一方、日本人はちょっとした不快感を敏感に察知し、解決することに長けていますよね。トイレのウォシュレットが一例です。日本人がバイクの上では寝られないし、ベトナム人にはウォッシュレットは生み出せません。お互いのいいところを組み合わせられたら、大きなパワーが生まれるのではないでしょうか
Q.やりがいを感じるとき
村人に現金収入をもたらせた時です。前述した生茶クッキーを一例にあげると、小売店さんと交渉が成立し、搬入を終え、店舗で売りはじめたあと、ドキドキしながら小売店さんからの反応を待っていました。すると、わずか3日後に着信があったのです。なにかのトラブルかと思い、緊張しながら電話に出ると「浅田さん!全部売れちゃったよ」「次はいつ持ってこられるの?」という内容でした。その瞬間、全身の力が抜けるとともに、自分の読みが当たっていたという安堵感や達成感など、いろいろな感情が押し寄せてきました。その瞬間が、これまでで一番嬉しかったですね。それから、村で子どもたちに日本語を教えています。どうしても週1回しか時間を取れないのですが、子どもたちにもっとたくさん教えて!とせがまれるときが嬉しいですね。
感想と将来像
Q.休日はどうお過ごしですか?
純粋な休日はあまりありません。いつでも仕事モードに切り替えられるよう、外出するときは集中を切らさないようにしています。とはいっても、そればかりでは精神的に疲れてしまうので、ジムに行くことが多いです。走っているときだけは、何もかも忘れられますからね。
Q.住んでの感想
やはり途上国、それも外国人がひとりもいない農村を中心にした生活ですから、大変で、帰りたいと考えたこともありました。でも、そういう環境で踏ん張って努力して結果を出していくうちに、自然とユニークな人間になれているという実感があります。これからの時代、厳しい環境におかれても自ら仕事を創り出す、そんな人が求められていると思うので、いまはこの任地でよかったなと思っています。
Q.帰ってからの将来像
今のところ、3つイメージを持っています。1つ目は、現場がある業界。株式や金融の世界にはそれほど興味がなく、働く人や消費者が身近に感じられる仕事をしたいです。2つ目は、それが商売、ビジネスにつながっていること。現場があって、世界共通の単位であるお金をやり取りするからこそ工夫するし、面白いと感じています。3つ目は、グローバル、それも東南アジアで仕事をしたい。日本に近い部分もあれば、まったく違うところもある。結果的に日本を拠点にして働くことになっても、どこかで海外でつながっていたいと思っています。
取材を終えて
浅田さんにインタビューをさせていただき、日々色んな角度から物事を判断し、実生活の中で体験されている方だと感じました。全く違う環境に一人で飛び込み、自分の力でコネクションを作り、結果を出して村人の収益を向上させている。誰もができるようなことではないと思います。成果を出しているからこそ、自分に自信を持つことができると感じました。自分の力で結果を残せるような人に憧れますね。現実を見て、自分を鍛えるために国際支援という選択をした浅田さん。これからのますますのご活躍をお祈りいたします。浅田さんインタビューご協力有難うございました。
取材:土居 由佳(JAC Recruitment Vietnam インターンシップ生)
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浅田さんへのコンタクトはこちら
- メール:letteraamoroso@hotmail.com
- ブログ:http://minavietnam.blog.fc2.com/
ライター情報
泊 和哉 - Tomari Kazuya - : JAC Recruitment Vietnam Co., Ltd.
大学卒業後、株式会社ジェイエイシー ジャパンに入社。日本(大阪)3年、シンガポール7年の勤務を経て2013年よりベトナムに。これまでに2000名を超える海外就職希望者との面談実績を持ち、日本人以外では主に製造業界におけるミドル~エグゼクティブ領域を担当し、幅広い国籍のご登録者への転職サポート経験あり。プライベートでは2児の父。シンガポールでの出産立会いと育児経験を持ち、現在も海外子育てをエンジョイ中。
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