ベトナム・ハノイで活動する日本人~ベトナム国営放送外国語放送局 稲元浩子さん~
更新日:2018年1月22日 (取材日:2018年1月16日) / ライター: JAC Recruitment Vietnam
日本でのテレビ制作の経験を経て、現在はベトナム国営放送外国語放送局(VTV4)でボランティアをされている稲元浩子さん。日本のODAの一環で、JICA 青年海外協力隊として2016年から番組制作に係る活動を行っています。そんな稲元さんから、貴重なお話をお聞きすることができました。
目次
小学校3年生からの夢
今までのご経歴を教えてください。
福岡の大学在学中にインターナショナルハウス(留学生寮)に住む外国人留学生と2年間一緒に暮らし、生活の手助けをした経験から、海外に興味を持ちました。昔からアナウンサーになりたいという夢があり、新卒でテレビ局を受験し、地元宮崎のケーブルテレビに総合職で入社しました。そして、念願叶って、半年後に希望の制作部に配属が決まり、5年間制作に携わることができました。制作局ではコーナーを担当させてもらえ、番組プログラムの編成、編集、リポート、ナレーション、番組MCなど、さまざまな業務を経験しました。
アナウンサーを志望した理由は何ですか?
小学校3年生のとき、「めざましテレビ」の小島奈津子さんというアナウンサーに憧れていました。毎朝、素敵な笑顔で情報を伝えていて、元気をもらっていました。「この人のように、たくさんの人を笑顔に出来るようになりたいな」と思い、アナウンサーという職業に興味を持ったのがきっかけです。高校で放送部に入り、大学ではアナウンスメント研究会に所属し、アルバイトでもMCの仕事を経験したり、とずっとアナウンサーという仕事について考えていました。
青年海外協力隊に応募したのはどうしてですか?
30歳を目前にして、一人前ではないけれど自分の夢だったアナウンサーに近いこともできていて満足していました。しかし、同時に、自分のやりたいことがわからなくなって、「一体何を目指しているんだろう」、と目標を見失ってしまいました。何か挑戦できることがないか探していたときに、友人が青年海外協力隊について教えてくれました。タイミングよく番組制作の募集があり、応募資格も満たしていたことに加え、派遣地が治安の良いベトナムでもあり、「これしかない!」と思い応募しました。
チームに変化を与えている実感
現在のお仕事内容を教えてください。
「VTV4」というベトナム国営テレビの外国語放送局で、ジャパンリンクという日本語放送の番組を制作しています。主な視聴者はベトナム在住の日本人、ベトナム人の日本語学習者、日本に住んでいるベトナム人などです。仕事内容は主に4つあります。原稿添削、ナレーション指導、番組内容へのアドバイス、広報活動です。添削作業ではベトナム人の同僚が翻訳した日本語が、放送に適した言葉になっているか、日本人にわかりやすい表現かどうか、チェックしています。また、正しいアクセントや間の取り方、内容に合わせて声のトーンを変えるなどを指導しています。さらに、日本人がベトナム文化を体験するというコーナーも同僚と共同制作しています。今後は番組をもっと知ってもらうため、広報活動にも力を入れていきたいです。
やりがいを感じるときを教えてください。
初めてアナウンスの指導をしたとき、同僚がナレーション原稿に手を加えず持ってきて、「稲元さん、まずは見本を見せてください。その通りに読みますね」と言われました。その時、私の任期終了後には、同僚達だけで原稿が読めるようにしよう、と決意しました。同僚4人を集め、毎週、アナウンス練習会を開き、アクセント辞典の引き方、発声方法など、アナウンスの基本から教えました。
しばらくすると、同僚は自ら練習するようになり、以前の原稿はアクセント記号や区切りが書き込まれ、マーカーで真っ赤になりました。半年後には、1分間の原稿の録音時間が1時間から30分に短縮されました。同僚の技術の向上はもちろん、自主的に取り組む姿勢の変化が一番嬉しかったです。
うまくいかないことは何ですか?
ベトナム人と日本人の考え方の違いをどうやって乗り越え、番組制作を行うかということです。同僚とは、1時間、2時間、と「何を伝えるか」について話し合いをすることがよくあります。
例えば、Tuồng(トゥオン)という伝統歌舞劇を取材したときに、日本人には能と同様、基本的な動作に伝統的な「型」がある点が面白いと伝えました。しかし、同僚はいまいちピンときていませんでした。そもそも日本の能を見たことがない、日本文化を深く理解していないので比較しようがなく、日本人が面白いと感じる点がわかりません。日本人視聴者の心に訴えるには、日本の文化を知ることが必要です。
また、同僚はホウレンソウ(報告・連絡・相談)が徹底されていません。今までは、「ベトナム国営放送はベトナムの組織であるため、日本人の考え方を押し付けることはできない」と考えていました。しかし、「VTV4」は対外的に日本人と関わる用務があるため、彼女たちの信用にも関わると思い、指摘しました。嫌われるのは怖かったのですが、意外にも同僚が理解を示してくれ、嬉しかったです。それまで、信頼関係を構築していたのが良かったのだろうと思います。
2年間という時間でできることは限られている
今後の目標を教えてください。
同僚同士が互いに指摘し合って能力を高められるようになってほしいです。配属当初、日本だとチームプレイで行われているものが個人プレイで行われており、助け合いがありませんでした。自分に能力や技術があっても、それを共有しない人が多いです。アナウンス練習も個人がいいと言われたのですが、お互いを刺激して高め合ってほしいのでグループレッスンにこだわりました。それが功を奏してか、最近では、お互いの関係性も少しずつ良くなっていると感じています。
取材を終えて
小さいころからアナウンサーを夢みて、現在、テレビ局で活動されている稲元さんから、「初志貫徹」という言葉が自然と浮かんできました。前職にも決して不満があったわけでないのに、より高い目標を目指し、実行に移されたことで、番組制作だけでなく昔から興味のあった海外での生活という夢も実現されたのだと思います。
お忙しい中お時間を割いて頂いた稲元さんに感謝申し上げます。
取材日:10月25日 松岡亮佑(JAC Recruitment Vietnamインターンシップ生)
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