ベトナム・ハノイで働く日本人インタビュー~ベトナムハウジング 畑野さん~
更新日:2016年3月11日 (取材日:2016年1月29日) / ライター: JAC Recruitment Vietnam
ベトナムの首都ハノイでトップレベルを誇る不動産賃貸、売買物件情報を保有している不動産仲介会社であるVietnam Housingで現地採用として働く、畑野千鶴さんにインタビューをしました。JICA青年海外協力隊がきっかけでベトナム入りされ、日系工場勤務を経て、現在、不動産に転職されている畑野さん。さらに7年間と長期間ベトナムに住んでいるからこその視点で話を聞かせていただきました。
現職、不動産に至るまで
今までのご経歴を教えてください。
大学では農業を専攻していました。大学卒業後、農業関係の商社に勤務し、経理も経験しました。しかし農業を主にして働きたいと思っていたので会社を退職、実家の熊本で県庁の農業技師として3年間働きました。働き始めのとき、農業経験のない中で指導をする立場だったので、働くなかで先輩から知識を習得していました。26歳のとき昔からの夢だった青年海外協力隊への思いをぶつけ、試験にチャレンジしました。2009年から2年間ベトナムの地方で、農協職員や農家を対象に農業指導をしました。その後、ベトナム人男性と結婚、出産しハノイで就職することとなりました。そして3年間ゴム製品を作る工場に内勤し、総務、人事、経理や技術などを任されていました。工場運営を任されるハードな仕事の中で、家庭と子供の教育を一番に考え、転職を考えるようになりました。そして、現在、ベトナムハウジングにて不動産仲介の営業やスタッフ管理する立場として働いています。
転職分野がかなり違いますが、それぞれ関係性はありましたか?
日本人価値観を持って、ベトナム人スタッフを指導することがベースとしてあります。どの業界でも日本人の求める、感覚、品質やサービスのレベルがあります。各ベトナム人スタッフを観察してお客様要求レベルに達していない場合は道標となるよう手を差し伸べています。今までの生活環境、教育が違うので、どうしても伝わらない感覚の穴埋めをしています。
一例として、洗濯の品質です。色物と一緒に洗濯してある、汚れが落ちていないなどのクレームがあります。こなせばよいと考えていて、お客さんから「何度伝えても感覚が伝わらない」と言われることがあります。このように日本とベトナムの架け橋の立場に居る点でどの職業でも関係があるように感じています。
不動産(現職)の仕事内容を教えてください。
主に営業で新規のお客様、お得意先のお客様を訪問したり、ベトナム人スタッフの管理です。転職して5ヶ月経過したところなので、物件について詳しく知るためにお客さんの案内に同行し通常設備を確認し知識を増やしているところです。初めはお客様より希望の物件条件を聞き取りし、ご希望に沿った物件をご提案させていただき、更にご案内時にはお客さんに物件情報、生活情報等々を伝えています。
例えば、お客様よりどんな要望がありますか?
ウォシュレット設備を要求されるお客様が増えています。ベトナムではウォシュレットはまだ標準設備ではありません。日本人のお客様がどういう要求をしているのか、オーナーに共有しニーズを伝えて、今後の設備向上を目指しています。お客さんの要求が増えれば増えるほど、オーナーさんの標準設備レベルへの意識が変わり充実した物件が増えていくようになると思います。
どのような物件をおすすめしますか?
現在弊社では「ベトナム賃貸物件情報」という雑誌を作成していますが、写真だけでは伝わりきらない物件の良さが沢山あります。部屋以外の家全体の雰囲気や、アパート周辺の環境や利便性等々ご案内時には直接伝えています。日本でも同じかと思いますが、ベトナムだとどんなに良いところに住んでも不満に感じる部分があるかと思います。どの物件も一長一短というところでしょうか。こういった物件環境の中で、オーナーさんなどのサポート体制が良いところはすごく安心だと思います。ベトナムの人も親切な人が多いので、生活で困っているとサポートしてくれる、サービス心旺盛の方も沢山いらっしゃいますから。
畑野さんのベトナムでのエピソード
一緒に働くベトナムスタッフとどう関係性を構築していますか?
「隠さない、嘘をつかない」ことが関係を構築する上で大切だと感じています。人と人の繋がりが強い国なので、日本よりフランクに環境を作ることができると思います。例えば、「彼氏居るの?結婚してるの?」といった質問をベトナム人は挨拶のように聞いてきます。むしろ、プライベートの話をしたほうが打ち解けて仕事がしやすくなります。聞かないほうが興味を持ってくれていないと思われ、なかなか心が通わせられないことがあります。だから、プライベートの話をオープンにする意味も込めて、「隠さない、嘘をつかない」ようにしています。
やりがいを感じるときはありますか?
ベトナム人との掛け合いに楽しさを感じます。日本人に合うサービスを提供するために、私一人ではどうにもならないので、スタッフやオーナーさんの協力が必要です。日本人のことを知ってもらうために、みんなを良い方向へと変えれないかと常に考えています。お客さんの居住環境を良くするために、スタッフ一人一人に接するときにも日本の感覚を伝えています。ベトナム人の感覚が正しいときや日本人の感覚が異常に厳しいときもあります。日本人の要求が厳しいときは「難しいけど頑張ってみて」と背中を押しています。駄目だしばかりしていてはやる気を喪失してしまう人が居るので、うまくコントロールしてやっています。
人生で受け取ったアドバイスで、特に思い出深いエピソードを教えてください。
新卒で就職した会社では、上司に注意ばかりされて本当に嫌でした。でも今思うとその経験が活きています。例えば、「自分の背後にある社内の動きを読みながら、電話の相手と話す」ということを言われていました。つまり瞬時に変わる社内の状況を把握しながら、電話の相手に状況を瞬時に的確に伝えるわけです。最初は、両方を聞き取らないといけないのでどちらに集中すればよいのかわからなくなり、てんてこ舞いでした。でも意識して継続すると慣れてできるようになります。今でもスタッフ管理をするうえで、自分の仕事をしながら、各スタッフの仕事内容、仕事量を把握する上で役立っています。昔、嫌いだった上司に今は、とても感謝しています。
人生のターニングポイント
ベトナムで青年海外協力隊をしていた2年間です。ずっと夢だったので「本当に行けた!」といった感じです。しかしこの期間、大変なことを沢山経験しました。まず、ベトナムの農村に入り、100%ベトナム人の環境でベトナム語しか通じない、ベトナム人との感覚の違いを感じながら農業指導をするといった活動に毎日ストレスを感じていました。また、プライベートでもホームステイをしており、一番の私の理解者であったホストマザーが急死。さらにホストファザーが病気になり、亡くなったため、これ以上悪いことは起こらないだろうと思いましたね。ですが、このベトナム人との濃厚な二年間が、私がベトナムで生活するための糧になっていると思っています。
隊員時代はどんな感じでしたか?
「とにかくすごかった」もう一回経験することは考えられないです。私もタフだとは言われていましたが、協力隊のメンバーはみんなタフなので、井の中の蛙といった感じでした。精神面が強い人、好奇心が強い人は経験の幅が広がると思います。年齢や職種もバラバラ、派遣先も都会や田舎といろんな人が居ましたし、話を聞いているだけでも勉強になりました。日本で起こることが、大したことじゃなくなりました。
ベトナムで働いて感じること
働くときに、ベトナムの特徴や性質をどう感じていますか?
きちんと信頼関係が構築できると、仕事しやすいと思います。叱っても、討論しても日本ほど引きずらないので、さっぱりした人間関係のように思います。たまに叱った後に、平気で普通に話しかけてくるので、ちゃんと考えてるのか不満に感じますが、きちんと信頼関係ができていれば、叱ったり、討論してもその後の人間関係には影響しないため、大変やりやすいですね。
日本とベトナムで違いを感じることはどんなことですか?
チームワークに関して、ベトナムと日本に違いを感じます。日本では教育期間に、団結して何かに取り組むという仕組みを小中高とステップを踏んで学びます。小学校では先生の指示を煽りながら、高校になれば生徒たちだけで企画し、実行と教育システムが出来上がっています。さらに団体行動も日本ではかなり細かいところまで指導されるため、完成度もレベルが高く感じます。当時は嫌になるほどさせられた団体訓練が、社会に出ると自然とチームワークという形で身についていると思います。一方、ベトナムの教育では、団結して取り組む機会が少なく、そこまで完璧を求められません。こういった教育の違いが、社会人になってからの仕事振りに影響しているように思います。
ハノイでの子育てはどうですか?
私が働いて、主人(ベトナム人)が家庭のことをしてくれているので、少し特殊かもしれません。生活面では日本で普通にできたいたことが、困難なこともありますが、主人の助けを借りて子育てしています。日本人の奥さんにとってはベトナムでの子育てはとても大変だと思います。ただ子供を連れて買い物したいだけなのですが、日本とは違い授乳の場所も、清潔なトイレもまだまだ整備されていません。そのため、買い物も一苦労です。しかし、一つ一つ困難なことが出来るようになったとき、達成感があります。そういった環境の中で、逆にそれを楽しめる方には合っていると思います。またベトナムの女性は産後半年から仕事復帰し、子供がいても働いている女性が多いので、子供がいる女性にも働きやすく子育てしやすい環境です。
インタビューを終えて
畑野さんは、いろんな話を次々と展開してくださり、たくさんの情報を教えていただきました。畑野さんのようにベトナムで生活を決めたときに、家庭を優先できるような環境がある点で、両立ができる環境は子供にとっても良い影響だと思いました。日本も、ベトナムのような家族意識を忘れないよう、私もそんな家庭を将来築いていけたらと思わず考えてしまいました。
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