ベトナム・ハノイで働く日本人インタビュー~Nippon Conveyor 岡崎さん~
更新日:2016年2月5日 (取材日:2016年1月14日) / ライター: 泊 和哉 - Tomari Kazuya - : JAC Recruitment Vietnam Co., Ltd.
大型コンベヤのトップメーカーとして知られる日本コンベアベトナムの社長、岡崎公彦さんにインタビューをしました。9年間のsoftware業務から営業職へと転身し、45歳で日本を飛び出し、ハノイでの仕事やハノイで感じていることを伺いました。
Softwareから営業職へと転身
Q.今までのご経歴を教えてください
日本でSoftware関係の会社で8、9年間勤務しました。ITバブルの時代だったので、最終的に会社を先輩と立ち上げました。もともとComputer の前に座ってsoftware を組んでいるのが苦痛でしょうがなかったんです。Softwareの厳格さが嫌いでした。ITバブルが崩壊してから日本のNIPPON Conveyor に転職しました。転職をする際、完全に職種が違う転職だったので、面接時にもうだめだろうと思いながら、気楽に話をしていました。最後に質問ありますか?と聞かれたとき、「ところで、CONVEYORって何ですか?」と聞いちゃったんですよね。それがうけたみたいです。それで、ここで採用を頂きました。営業職に転職しようと思ったきっかけは、softwareと違い人はアバウトですし、人と話しているほうが向いていると思っていたからです。それ以来、13、14年働いています。日本では、国内向けの営業をしていました。電力、製鉄所等に、NIPPON CONVEYORのコンベヤが導入されています。拠点は東京ですが、お客さんは全国各地に居ました。東日本大震災の復興の関係で、東北地方で仕事があったので、2年ほど宮城県東松島で営業として駐在し、現地のサポートをしていました。現在は、ハノイのNIPPON CONVEYOR の駐在員として勤務しています。
Q.現職では具体的にどんなことをしていますか?
日本国内では、営業をしていました。弊社は業界内ではトップメーカーなので、基本的に待ちの営業です。その代わり、案件毎に価格競争が厳しいです。計画段階からコスト削減方法をお客さんと話し合ったりしています。必要な際は、依頼の電話が来ますね。品質と信頼性は高いけれど、価格も高いことが評判なので改善していかなければならない点でもあります。低価格を求めているお客さんには、こちらから積極的に提案をして営業をしています。ちょっと特殊ですね。
ベトナムでは、新規開拓が難しいです。日本国内では知名度はありますが、海外はまだまだです。今のハノイの支店があることで、連絡が来やすい環境を整えています。ベトナムでは、ローカルのゼネコンと深い付き合いをしています。そこが取ろうとしている案件をサポートしています。主にダム関係が多いですね。ベルトコンベヤで運べる物を取り扱っている様々なお客様と付き合いがあるので、そういう意味では面白い仕事かもしれないですね。
Q.日本の企業と現地の企業に営業をするとき違う点はありますか?
日本の企業は、情でわかることがあるのですが、ベトナムではそれは通用しないですね。日本はできないことをできないとは言わないでしょ。時間をかけても何とか工夫してできる方法を見つけます。でもベトナムではそんな時間をかけてられません。できるかできないかは即回答を求められます。それから、接待は日本特有のスタイルだと思いますね。見返りをお互い求めているわけではないですが、自然とそうなることが多いです。ベトナムでは、この習慣はありえないようです。でもこれが本当のビジネスの姿ですけどね。やればやった分信頼してもらえますし、信頼を長く積み重ねていくことが大事という点では世界各国共通していますよね。
45歳でベトナムに飛び出し、感じていること
Q.ベトナムに来た理由を教えてください。
ちょうど前任者の退職時期となって私に声がかかりました。まず、海外に行き新しいことにチャレンジできることはチャンスだと感じました。国内でこのまま慣れた仕事をするより、もっと他にチャレンジしたいと感じ、即答でハノイに行きますと返事をしました。45歳の頃ですね。それまで全く英語も喋れなかったんですけどね。英語を喋れるようになりたい。そうすると、世界が広がるじゃないですか!営業もでき、それに今まで積み重ねてきた実績もあります。これらがあれば、何とでもなる。と思い、チャンスを得た感じでしたね。家族にも、ベトナムに行くから!と相談というよりは宣言して来ました。帰りたくないと言い張っているので、当分帰らず、ハノイで仕事していると思います。
Q.ハノイに来てどうですか?
他国に行ったときに、拒否反応があると思いますが、ベトナムでは全く感じない、なんとなく馴染めている気がします。それは、ベトナム人の人柄とかもあるのかなと思います。
細かい人間でしたが、ハノイに来て気にならなくなりました。「自分のことしか考えていない自分勝手な人」日本語で言うと悪い言葉に聞こえますが、そういう意味ではなく、ここでは、まず自分があって。といった感じなのです。うまい言葉が見つからないんですけど。。。
例えば、バイク。少しでも隙間が合ればすぐに入る。信号も守らない。逆走する。これはただ、前に行きたいだけのようです。こいつの進路をふさいでやろうとか、早くつきたいとかそういうことではなく、単純に空いてるから前行っちゃおうという軽い気持ちです。それを理解するまでに時間がかかりました。全然悪気があるのではなく、純粋な自分勝手な感じがします。
よくスタッフに話すのは、日本人の気質って、自分のことをまず考えない。相手のことを先に考えるということ。これがまず理解されません。ベトナムの人と話をしていると、「これをしてあげる」「私はこんなことをあなたにしたい」とよく言いわれます。こちらが、それを望む望まない関係なしに、この言葉をよく言われます。これは、日本人の感覚からすると押しつけがましかったり、なんでそんなこと勝手に決めるの?となると思うんですけど、彼らは、ただ単純に好意で、「こうしてあげたい」と思っているんです。これがたぶんベトナム人の気質の一つだと思います。私は先に相手の意向を聞いて欲しいと伝えるのですが、なぜそんなことを言われているのか疑問なんだろうと思います。
Q.日本人は閉じ込めて終わることがあると思うですけど、岡崎さんはスタッフに伝えている点で、素敵だと感じます。その辺はどうですか?
僕も溜め込んでいました。けど健康に悪いです。ある駐在の方から聞いた話ですが、ベトナムの生活で三週間、三ヶ月、三年でそれぞれ山が来ると。本当にベトナムが嫌になる人は、三週間でも嫌になる人も居るみたいです。この山を乗り越えることが出来ると、好きになるようです。聞いた当時はわからなかったですが、今実感しています。小さなイライラの積み重ねが溜まります。つまらないことでイラっとします。道を歩いていても感じることがありますね。でも、こちらの生活習慣なので、私達が馴染まないといけないんですよね。笑って過ごすことの大切さを実感しています。
日本人1人で今の私にできること
Q.ベトナム人が好きな理由
いつも笑っているから。仕事が行き詰まっていても、彼らは笑顔です。昔の僕だったら、真剣に仕事しろってきれていたと思います。彼らが、ずっと笑顔でいられる環境を提供することが、僕の仕事です。そのために、本社に対して、ガンガン要求をすることもあります。給料増やしたり、休暇を増やしたり、できる事から地道にやっています。もう家族よりも長く一緒に生活をしているので、スタッフを守ることが僕の仕事ですね。彼らは常に自分たちのことを考えてくれているのかどうか見ていると思いますし、それを行動で示さなくてはいけません。
Q.どういう風にこういう環境を作っているんですか?
自分のやりたいことを少しずつ通していくことでそのうち変わっていくと思います。難しいですが。日本の習慣を持ち込んで押し付けてしまうやり方は、嫌なので、そのために時間がかかることもあります。実情を知っている人から言われると甘いと言われるかもしれないですけど、川の流れを少しずつ変えるように、微妙に変化させているつもりです。
それにベトナム人スタッフの仕事に要する時間が読めないので、前もって、余裕を持って仕事をお願いするようにしていますね。結構難しいですね。語学力がないということもあるのですが、その辺は試行錯誤しながらやっています。
海外へ出て気づいたこと
Q.ハノイに住んでの感想
休日は、路地を歩いて、見たことのない文字を発見すると、その店に入り、注文して、新しいベトナム料理を開拓しています。ハノイは空気が汚く、騒音も凄いですが、ベトナム人の人情に触れるととても素敵な街だと思います。何か温かい気持ちにさせてくれる街です。今ではノイバイ空港に着くと何故かホッとしてしまう程になりました。これからもまだ知らないハノイの魅力を探し続けたいと思います。
Q.海外進出を考えている方に向けて一言
日本が便利すぎる環境だと思いますね。ハノイに来て、生活水準が落ちたとは思わないです。今の環境で十分生活ができます。便利さになれてしまう怖さをハノイに来て知りました。24時間何でも欲しいものが手に入る環境は、普通に考えたらおかしいですよ。日本をもう一回見直す意味でも、海外に出ることは意味があることだと思います。
インタビューを終えて
岡崎さんは、NIPPON CONVEYOR VIETNAMの父親のような印象でした。色んな話や雑談を交えてインタビューをさせて頂き、有意義な時間を有難うございました。最後に、岡崎さんが話されていたことで、印象的な言葉が、120%やって自分で考えて行動することで、初めて得られるものがあるということを話されていました。自己成長には、主体性は欠かすことの出来ない要素の一つだと改めて感じさせられました。
取材:土居 由佳(JAC Recruitment Vietnam インターンシップ生)
ライター情報
泊 和哉 - Tomari Kazuya - : JAC Recruitment Vietnam Co., Ltd.
大学卒業後、株式会社ジェイエイシー ジャパンに入社。日本(大阪)3年、シンガポール7年の勤務を経て2013年よりベトナムに。これまでに2000名を超える海外就職希望者との面談実績を持ち、日本人以外では主に製造業界におけるミドル~エグゼクティブ領域を担当し、幅広い国籍のご登録者への転職サポート経験あり。プライベートでは2児の父。シンガポールでの出産立会いと育児経験を持ち、現在も海外子育てをエンジョイ中。
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