ベトナム・ハノイで働く日本人~JICA 吉田直広さん~
更新日:2017年9月3日 (取材日:2017年8月17日) / ライター: JAC Recruitment Vietnam
今回はJICAベトナム事務所の吉田直広さんにインタビューして来ました。2008年に初めてベトナムに来られてから、様々な形でベトナムに携わっていらっしゃる吉田さんのJICAでのお仕事やベトナムでの生活のご様子をぜひご覧ください。
目次
JICAについて
JICAは、日本の政府開発援助(ODA)を実施する援助機関です。大規模な社会基盤整備への支援から、コミュニティに根差した草の根レベルの協力まで、途上国の多様なニーズに対応する事業を展開しています。その中で、JICAベトナム事務所は、ベトナム政府に向けた案件の形成やプロジェクト実施支援を担っています。
ベトナムでは、多くの日本のODAプロジェクトが実施されています。たとえばハノイでは、ノイバイ空港やニャッタン橋の他にも、バックマイ病院、環状3号線など、様々な形でベトナムの方々の生活や社会経済の発展にお役立ちしています。ハノイにお住まいの皆様には、ぜひ一度足を運んでいただければ嬉しいです。
今までの経歴
今までのご経歴を教えてください。
私は今までに、様々な形でベトナムに来ています。
一番初めは、大学院生時代のインターンシップです。元々途上国支援や国際開発に関する仕事に興味があったので、JICAの事務所では実際にどんな仕事をしているのか興味を抱き、インターンシップに応募しました。当時は、ベトナムに絞っていたわけではなく、自分が興味を持っていた都市開発分野の業務に応募した結果、ベトナムでのインターンシップが決まり、2008年に初めてベトナムに来ました。
その後、縁あってJICAに入社し、ベトナム担当課に配属されました。新人時代の2010年にOJT研修でベトナムに来た後、ベトナム担当課の出張でも毎月のように来ていました。このように様々な形でベトナムと関わらせていただいたので、1つの節目としてベトナムでの駐在を志望し、2014年11月からJICAベトナム事務所で勤務しています。インターンシップ、OJT研修、駐在員の3パターン全てでベトナムに滞在して働いているのは、私が初めてだと思います。
今の職業を選ばれたきっかけはなんですか?
大学時代は、国際法を専攻していました。その関係で、世界各国の大学生が参加する模擬裁判の国際大会の運営に携わったことが今の仕事に就くことになったきっかけです。大会を通し、様々な国の人たちと意見を交わしていくうちに、「こんなにも国によってものの考え方が違うのか」と強く感じました。私は、ずっと日本で育ったので、そうした違いがとても面白く、将来もこんな風に外国の人たちと意見を交わしながら仕事をしたいと思いました。また、平等な社会の実現が自分の信条でしたので、その両方を追及できる仕事が、今のJICAでした。
日本にいた時のお仕事について教えてください。
ベトナム担当課に所属しており、ベトナム向けの円借款の案件形成を担当していました。初めて担当した案件は、ホーチミンの南部を走るベンルックーロンタイン高速道路の案件です。具体的には、事業性調査を分析した上で、同プロジェクトのベトナムに与える開発効果が高く、ODAで融資すべき案件であることを検証していきます。そして、べトナム政府、日本政府と協議を重ね、最終的にベトナム政府とJICAで借款契約を結ぶところまで担当させていただきました。
現在のお仕事について
現在のお仕事について教えて下さい。
私は、運輸交通セクターの都市鉄道案件を担当しており、案件の実施監理が主な仕事です。実施監理とは、例えばホーチミン都市鉄道1号線といった円借款事業が円滑に進むように、ベトナム政府の方々を含む事業にかかわる様々なステークホルダーと協議を重ねつつ、プロジェクトをサポートする仕事です。現在実施中のプロジェクトには、先にあげたホーチミン市都市鉄道1号線建設事業やハノイ市都市鉄道建設事業(1号線および2号線)等があります。拠点はハノイで、ホーチミンには2ヶ月に1回程度出張しています。ベトナムの中央政府がハノイにあるので、JICAのオフィスもハノイがメインとなり、現在日本人30名強とベトナム人約60名、計90名以上が和気あいあいと働いています。業務は、上司とベトナム人スタッフと協調しつつ、チームとして取り組んでいます。一体感を持って働いており、外国の方々と協調して働くという就職前の目標の一つは達成できていると思います。
現在のお仕事で、一番やりがいを感じている部分はどこですか?
自分がこれまでに担当した案件が完成し、ベトナムの方々に役立っている時にやりがいを感じます。ベトナムで初めて配属された部署で、今のノイバイ空港国際ターミナル2の建設プロジェクトを担当させていただきました。それがきっかけで、2015年1月のノイバイ空港のオープニング式典に参加させていただきました。自分が携わった仕事が形になることの面白さを感じ、とても嬉しかったことを鮮明に覚えています。
ODA事業には、本当に多くの方々が携わっています。ベトナム政府をはじめとし、現場で実際に建設に携わった方々等がたくさんいらっしゃいます。私の貢献は非常に微かなものではありますが、その一方で自分が完成した案件に関与し、ベトナムの発展に貢献できているということに、大変やりがいを感じております。
ベトナムで働いてみて気づいたことはありましたか?
ベトナムという国、海外で働くことに面白さを感じています。国が違えば考え方も異なりますので、その違いを超えるのが第一歩です。そのためには、何度も何度も協議を重ね、互いに認め合って初めて、仕事が成り立っていきます。大変だと感じることもありますが、カウンターパートと信頼関係を築くことができた際に、大きな達成感を得ています。
今後の目標を教えてください。
現在の一番の目標は、担当しているハノイとホーチミンの都市鉄道事業が完成し、実際に車両が走行しているところを見ることです。ODA事業は案件の形成から完成までが長く、一人が全行程にかかわることは稀です。ハノイとホーチミンの都市鉄道も、完成まで私がずっとベトナムにいることはできません。前任からもらったバトンを後任に繋いでいくことになりますが、自分もその案件に携わった者として完成を見届けたいです。後任にバトンを託すまで、全力で業務に取り組みたいと思います。そして完成後は、ぜひハノイとホーチミンの両方で、先頭車両に乗りたいですね。
ベトナムでの生活について
ベトナムに対してどんなイメージを持っていましたか?
途上国というイメージを持ってベトナムに来たので、最初の頃はいたるところに貧しさを探していたと感じます。しかし今では、ベトナムの方々の生活は非常に豊かだと思っています。ベトナムは、現在進行形でめまぐるしく経済発展を遂げていますが、何よりもベトナム人の方が皆さん街で楽しそうに過ごされている風景を見たときに豊かさを感じます。また、ベトナムに住んでみて、ベトナム人のおおらかさに気づきました。隣人に対してとても寛容で、非常に居心地がよいと感じています。
ベトナムでの生活はいかがですか?
まず、ベトナムの食事は安くておいしいです。そこが生活する上でのベトナムのおすすめポイントの一つですね。また、私は日本人のテニスクラブに所属していて、週末はいつもテニスをしています。そのテニスクラブに登録している日本人は100人くらいいて、土日各回約30人規模でプレーを楽しんでいます。他にも日本人同士のコミュニティがたくさんあるので、日本人の友達も作りやすい、初めて海外で勤務される方々にもとても良い環境だと思います。
初めてベトナムに来られた時と今で変化はありましたか?
一番変化を感じるところは、様々なインフラの発達です。手前味噌ではありますが、ノイバイ空港のターミナル2からニャッタン橋に代表されるODA事業のみならず、徐々にではありますが、基礎インフラが整いつつあり、以前と比べると随分住みやすくなりました。また、LOTTEタワーに象徴されるように高層ビルもどんどん建設されていて、ベトナムの急成長を日々実感することができ、楽しいです。
感想
JICAでのお仕事がどんなお仕事なのか全く分からない状態で挑んだ今回のインタビューでしたが、吉田さんにご丁寧に説明していただき、大変勉強となりました。日本のODAによるベトナムでのプロジェクトに関するお話を聞き、私が今まで意識していなかったところで、日本とベトナムにつながりがあるということ知ることができました。
インタビューを通して、ベトナムの発展をその目で見ながら、またご自身もその一部となることのできるJICAでのお仕事に対して、吉田さんがとてもやりがいをかんじていらっしゃる様子が伝わって来ました。
お忙しい中お時間をいただき、ありがとうございました!
取材日:8月17日 坂本詩歩(JAC Recruitment インターンシップ生)