ベトナム・ホーチミンで働く日本人~日本語教師 Kさん~
更新日:2017年9月13日 (取材日:2017年8月27日) / ライター: JAC Recruitment Vietnam
ベトナムでは今、中間層の教育熱が高まっています。そこで今回はホーチミンで日本の教育を提供している A塾で子供向け日本語教師として働くKさんにインタビューしてきました。Kさんがなぜベトナムを選んだか、また現在どのようなお仕事をしているのかなど様々なお話を伺ってきました。
目次
子供の成長を見ることができる嬉しさ
A塾について教えてください。
もともとは日本で塾を運営していた会社が出資した、初の海外拠点です。日本の良さや教育を、まだ教育環境が整っておらず、これから伸びて行くベトナムに持ち込むことで、子供達のビジョンが広がってほしいという思いです。ベトナムは治安も良く、たくさんの日系企業が進出しています。今後は近郊の東南アジア諸国にも塾を開校し、さらには、ベトナムを東南アジアエリアの中心拠点にできたらいいなと考えて始めているところです。ベトナム国内に3か所、塾を開校しており、私が働いているのは空港の近くの校舎です。行なっている教科は主に4教科で、そろばん、理科、小さな子どもに向けた読書、そして日本語です。年齢層は日本語が1番高く、私の校舎では6〜16歳の生徒を受け持っています。夏期講習では、日本のモラルを教えるということで、週一回道徳の授業もあり、その中で、人への感謝・整理整頓等を教えてきました。日本語と日本の文化を、日本人から直接学べる点がA塾の強みで、質の高い日本の教育を提供しています。
現在のお仕事について教えてください。
11時50分に出勤し16時までは授業の準備をします。例えば、その日に授業で使うパワーポイントの下見やプリントの準備、子供の習熟度の確認や、保護者連絡をします。そのあと17:00からは授業を行います。1コマ90分で1日に2コマあります。授業は完全日本語ですが、補助として英語も少しだけ使っています。教師は日本人とベトナム人で、担当する日が決まっています。小さな子に日本語で教えるのはもちろん大変ですし、スタッフや保護者への説明は英語で行うので、自分の伝えたいことがうまく伝わらない時はもどかしいです。対して、日本語が全くわからず、何もできなかった子が、自分の言いたいことを日本語だけで理解したり、話してくれたりした時など、生徒の成長が見られた時は大変嬉しいです。開校当初から働いていて、入会した生徒を一から見ているので、成長していく様子を見ることができるのは、やりがいを強く感じることができて嬉しいです。
満を持して自分の学んだことを活かす
なぜベトナムへ?
最初はぼんやりと「海外で仕事をしたい」と考えていて、海外の転職活動専門のエージェントに登録しました。すると、同じ大学の先輩であるJAC Recruitment Vietnamの宮原さんが、そのエージェント主催のイベントに講師として来られ、女性が初めて海外で働くならタイとベトナム、特にベトナムは今オススメだと聞きました。私自身、タイはすでに多くの日本人や日系企業が進出していたのを知っており、それよりもこれからどんどん成長していくベトナムで働くことのほうが、将来価値のあるものになるのではと思いました。さらに、大学時代のベトナム語専攻の友人に、ベトナム語はやればできると言われたのを鵜呑みにして、一度も行ったことがないのに、ベトナムで働く道を選びました。2016年5月に、今とは全く異なる営業職に就くために、初めてベトナム・ホーチミンに来ました。その仕事は2ヶ月の試用期間がありましたが、その会社ではトラブルが発生しており、かなり忙しい時期に自分が入社しました。自分も思うように職場で活躍できず、2ヶ月後にそのまま契約を解約されてしまいました。双方に問題があったことは雰囲気で気づいていて、仕方ないなと思いました。その後、ハノイに移って別の会社に入社しましたが、どうしてもホーチミンのことが忘れられず、改めてホーチミンに戻り、日本語教師になりました。
なぜベトナムで日本語教師をしているのですか?
自らがベトナムの教育を充実させようと思ったのではありません。母が保育士という家庭環境に加え、大学時代に、教職(中学高校/英語)・児童英語教員・日本語教員の3つの課程を修了していたので、これまで外国語大学で勉強してきた強みを活かしたい気持ちと、ホーチミンで生活したいという思いが強まったときに、ちょうど現在の職場の2拠点目の開校に向けた人材募集があり、応募して採用されました。
日本の教育に関わろうとはしなかったのですか?
新卒後すぐに教育業界に行くと、その後、教育以外の道に行きづらいと言われがちです。就職活動時は悩みましたが、保育の仕事は、おばさんになってからでもチャンスは巡ってくるという母からのアドバイスも参考にし、繰り返しの質問や失敗が「新卒」という理由で許され、肩書きに守られながら、いろんなことに挑戦できる一度きりのチャンスを、その時は教育の仕事ではなく、他の世界を知るために使おうと、営業職を選びました。日本では引越し会社の法人営業として二年間働き、いろんなことを学びましたが、やっぱり海外で働きたいという思いが日に日に強くなり、世間では「3年頑張ること」が定説でしたが、もう一年その会社にいるよりも、その貴重な時間を自分のやりたいことに使おうと、転職を決めました。二年間しか働かなかったことで、批判もありますが、次の仕事も見つかり、私自身後悔はしていません。
ベトナムでの生活は?
日本での仕事と違って残業しません。大変楽しい職場で、仕事が終われば、働く仲間同士でご飯に行くような、気さくな関係が心地良いです。現在、他の塾の生徒より、もっと日本語の力が身に着くよう日々努力しています。生徒が、塾に行って楽しかった・良かったと思えるよう、指導法やトピックの内容を工夫することが難しいです。生徒も、スキルがつくと自信につながり、視野も広がります。実は、ほとんどの保護者は日本語が出来ません。彼らは、子どものスキル上達より、どちらかと言えば、自分の子が塾での勉強を楽しんでいる姿に喜びを感じるので、生徒・保護者ともに、日本語の勉強をしてよかったと満足してもらえるよう心がけています。
ベトナムに来て変わった価値観
会社・仕事が大切という考えよりも、「人のほうが大事」だと、ようやく分かるようになりました。日本にいた頃は、体調が悪くて病院に行きたくても、仕事優先で、休むことはできませんでした。ベトナム人も仕事を大事にしますが、それ以上に、自分自身や家庭・いっしょに働く仲間が大切という考えを持っています。その気持ちがないと、生徒も大事にできません。
この後に不幸な人生が待っていても今を楽しく生きる
これから海外に向けて働く人へメッセージをお願いします。
「行かなきゃずっと同じ生活でどうにもならない。だったら行った方がいい。行けばなんとかなる。」行ってみて合わなければ帰るのもアリだと思います。休職期間が長いと不利になりますし、旅行気分で海外に行ってみて、自分の働きたい国を探してみるのもいいと思います。その時に、海外で働く日本人に話を聞いてみる。日本にずっといても分からないままです。私は英米語学科出身で、ベトナム語は全く知りませんでした。お金の単位や右・左という単語も知らず、こちらに来て覚えました。日本語ができるベトナム人も増えてきて、言葉による不便はだいぶ解消されました。暮らしもどんどん便利になっているので、そのような意味でベトナムは来やすい国です。
今後挑戦したいことはありますか。
人に教えるという仕事は、国や内容が変わっても、経験を次に生かせると思います。今後A塾はベトナム以外の東南アジアの国へ進出する可能性があります。その際には、きっと実習のように、スタッフを指導する先生が必要になるので、「先生の先生」という仕事もやってみたいです。もしもベトナム校が、東南アジアの中心拠点になったら、今後いろんな文化を持っている人がやって来て、交流できるかもしれないと楽しみです。今の楽しみは、塾の生徒たちがどのように成長していくのかを、見届けることです。私は教えることが大好きなので、教育の仕事を選び続けたいと思います。
インタビューの感想
お仕事の話や子供の話を笑顔で話してくださり、今やっているお仕事が本当に楽しいことがKさんを見て感じました。決断力と行動力のある方で今を楽しく生きることを常に考えており、同じ大学の先輩として就活生の私に様々なアドバイスをいただき、大変参考になりました。
お忙しい中、お時間を割いて頂いたKさんに感謝申し上げます。
8月27日 氏家久美子 (JAC Recruitment Vietnamインターンシップ生)