ベトナム・ホーチミンで働く日本人~市岡製菓/ICHIOKA VIETNAM 市岡志麻さん~
更新日:2017年8月30日 (取材日:2017年6月7日) / ライター: JAC Recruitment Vietnam
徳島県の製菓会社、市岡製菓代表の娘として生まれた市岡志麻さん。市岡製菓の新たな取組として初の海外進出の為に1人でベトナムに渡越されました。1年半でファミリーマートや高島屋に店舗出店をするなど目まぐるしい成長を遂げた裏側についてお聞きしました。
ベトナムの可能性を感じ社長に直談判
市岡さんの今までの経緯について教えてください。
祖父の代から始まった市岡製菓の娘として徳島県で生まれ育ちました。大学は東京の大学に通い、卒業したら戻ってきなさいと両親には言われていたのですが、姉が居たので私は自分のしたいことをしようと、親の反対を押し切って関東で就職しました。その後6年ほどSEプログラマーの仕事をしていたのですが、東京で勤務していた時も定期的に両親から帰ってきなさいと言われており、当時の仕事に疲れ切ってしまって居た時に、徳島に帰ろうと思い仕事を辞めて徳島に戻り市岡製菓に入社しました。
ベトナムに来ることになった理由はなんですか?
丁度、わたしが市岡製菓に入社した際に会社がホーチミンに進出する方向でベトナムに何度か出張に行っていました。わたしの姉は市岡製菓を継ぐ者として日本での業務を行っており、私なら手が空いていると思われたのか、出張に動向してベトナムに頻繁に行くようになりました。数回に渡る出張を通して、ベトナムについての理解が深まるごとに、私の中で面白そうで可能性に満ち溢れたな国だと思うようになり、私が駐在員としてベトナムでの市場へチャレンジしたいと社長に直談判し駐在することになりました。
2015年に、一度海外進出自体が白紙になりそうだったのですが、この急成長している国で3年後などと言っていたら遅いと感じ、やるなら今しかないと思いました。
社長としては、もともと現地調査に同行していた海外担当のスタッフを駐在員に。と言う思いはあったのですが、法律も生活も文化も異なる国で大切な社員に何かあってはと言う不安から悩んでいたようです。その時、私自身から駐在を希望したことでチャレンジの覚悟を決めたようです。
御社の事業内容について教えてください。
市岡製菓は徳島県にある製菓会社になります。徳島県産の素材を使って商品を製造し全国に発売しています。ICHIOKA VIETNAMは市岡製菓初の海外進出支社になります。
ICHIOKA VIETNAMでは和菓子の製造、販売を行っていて、だいふくとどらやきを計9種類の商品を作っています。今は高島屋にある自社店舗と、ファミリーマート、ミニストップ、東京マート、イオン、イオンシティマートに自社商品を置かせていただいています。
なぜ初めての海外進出の拠点をベトナムに選んだのですか?
弊社では4年前から海外進出を検討していて、東南アジア各国を調査していました。その中で、シンガポールやタイは既に世界各国から製菓業界の会社が進出しており、中小企業である弊社が勝ち抜くのは大変だと社長の判断でした。一方、社会主義国のベトナムでは進出している製菓企業は多くなく、特に日系の製菓企業は少ない事がわかったので、弊社の様な中小企業がシェアを拡大出来る可能性があるのではないか。と夢がある国に思えたからです。また、ゆくゆくはASEANエリアにも進出拡大したいと考えている弊社にとって、ベトナムは丁度いい立地でも有りました。
機械は直せばなんとかなるが、人に関しては直せるものではない
海外事業の立ち上げで初めに行ったことは何ですか?
初めは、ベトナム人スタッフ1人と、二人三脚でホテルのロビーを利用して原材料の調達や仕事環境の設備など様々な問い合わせを行っていました。
原材料として使えそうなものを買い込んでは、日本に戻ってこれで作れるか試作をしてという繰り返しでした。私はベトナム語が読めないし、ベトナム人スタッフも知識があるわけでは無いので、小麦粉だと思って購入したら薄力粉だったというハプニングなども沢山ありました。また、日本から機材の輸入手続きやライセンス所得の手続きなども全てが手探りで、なんとか今に至っています。
ベトナムで事業を始めて一番大変だったことはなんですか?
1番を決めきれないくらい全てが大変でした。
しかし、機械が壊れたら直せばいいですし、商品の輸入が間に合わなければ国内の物で対応するなど出来るのですが、人に関しては直せるのもではないので一番難しいのはマネジメントだと感じます。
立ち上げ当初から合わせて10人ほど採用しているのですが、新しい挑戦がしたいと退職した方もいて、弊社も初めての海外進出なのでわからないことが多く、日系企業的な考えも強かったものですから、人が退職する度にショックは大きかったですね。
それでも、私は本当に雇ったスタッフの能力が高く、様々な人にサポートして頂けて、多くの人との出会いのお陰でここまでやってこれたと思っています。
今までで1番嬉しかったことはなんですか?
これも1番を決められないくらい沢山ありますね。まず初めは、今のこの職場を借りれて製造が始まった時です。他には、ライセンス取得でき従業員を雇えて初めて製造した商品が納品されたその瞬間も嬉しかったですし、高島屋の自社店舗がオープンした時や、新商品が発売できた時など、今まで何度も思わず涙流しそうなくらい嬉しかった事は多かったです。
ベトナムで愛される地産地消を行っていきたい
ベトナムでの生活は日本と比べていかがですか?
日本と比べて便利かというと、そうでは無いですけれど過ごしやすい国だと感じています。
ご飯も美味しいですし、言葉が通じなくても身振り手振りで生活面では伝わりますし、みなさん本当に優しいですし、これといって不便は感じたことが無いです。
また、本当に困った時はスタッフがいつも助けてくれています。
ここまでホームシックにならずに頑張ってこれたのは、私をサポートしてくれるベトナム人スタッフと美味しいご飯と、ビールが安く飲めるというのが大きいと思います!
今後、ICHIOKA VIETNAMをどのように発展させていきたいですか?
まずはホーチミンからベトナム国内に弊社のお菓子を広めて、より多くの人に食べてもらいたいと思っています。そしてゆくゆくは、ASEANエリアへの輸出入を行っていきたいと思っています。日本の市岡製菓では、徳島の地産地消で地元の人に愛される企業づくりを心がけています。同じようにICHIOKA VIETNAMもベトナムで作られた素材を使って、農家の人の思いを汲み取りながらお菓子を作り、ベトナムでの地産地消を行っていきたいです。また、日本とベトナムそれぞれの魅力を感じてもらえるような商品展開をするのが夢です。
今後ベトナムに来て何かを成し遂げようとしている人へアドバイスをお願い致します。
日本と違って、法律面や文化など大変なことは沢山ありますが、国として活気があって、ベトナム人は素敵な魅力を持っている方がいっぱいで、また日本人ネットワークも強固で沢山の人に助けて頂けて、私自身も心が折れそうになった時もありますが、頑張っていれば結果がついてくるので、まずはベトナムにいらっしゃることをお待ちしています。
インタビューの感想
2区にある一軒家から笑顔で出迎えて下さった市岡さん。お話をお伺いていると、自社製品への愛とベトナム社員への愛が言葉の一つ一つから伝わってきました。
市岡製菓が地元徳島で愛されている企業のように、ichioka Vietnamをベトナム全土で愛される企業にしたいという市岡さんの熱い思いをお聞きすることが出来ました。
お忙しい中、お時間を割いて頂いた市岡さんに感謝申し上げます。
取材日:6月7日加藤真友(JAC Recruitment Vietnamインターンシップ生)