ベトナム・ホーチミンで働く日本人~五洲興産 石塚佳奈子さん~
更新日:2017年7月12日 (取材日:2017年6月2日) / ライター: JAC Recruitment Vietnam
水処理設備会社、五洲興産ベトナムで活躍されている石塚佳奈子さん。大学在学中にハノイへベトナム語留学に行き、その期間に縁があって今の会社に就職されました。今回は、男性の多い建築業界で、大学卒業後に海外で働く事になった経緯や思いをお聞きしました。
学生時代に休学してベトナムへ
ベトナムに興味を持ったきっかけは何だったんですか?
ベトナムには大学在学中に1年間休学をしてハノイに語学留学に行っていました。漠然と海外に行きたいという思いはあったのですが、ベトナムに興味を持ったきっかけは少し変わっていて。母の知合いのご家族がベトナムで生活を始めるということで、お子さんの家庭教師として一緒に行くのはどうかと誘われたのがきっかけでした。
結局その家庭教師計画は無くなってしまったのですが、当時2012年は「チャイナ・プラス・ワン戦略」の投資先としてベトナムが注目されており、経済成長真っ只中のベトナムを知る事は面白いことに繋がるかもしれないと思い、大学を休学してハノイに語学留学に行きました。
ベトナム語を選んだ理由はなんですか?
まず、英語以外の言語を学びたい、というのがはじめにありました。社会人になったら必然的に英語の勉強はするだろう、と思ったからです。ベトナム語を選択した理由は、興味を持った国の母国語を勉強することは、その国の文化を学ぶことと思ったからです。
というのが建前の理由で、本音はタイ語や韓国語など、その国の文字を覚えなくていいから楽だ、という安直な理由だったと思います。ベトナム語はフランスの植民地時代からアルファベットを使っているので。
また、せっかく勉強するならなまりの無いベトナム語を勉強したいと思い、ハノイを留学先に選びました。
ハノイでの留学生活はいかがでしたか?
ハノイでの生活は毎日が刺激的でしたね。23年間生きてきた中で最も濃厚な1年間でした。ベトナム人の喜怒哀楽を通して、日々文化の違いを感じました。8か月間、洋服屋を営むベトナム人の友人の家でホームステイしたのですが、私のカタコトのベトナム語でコミュニケーションをとるのは大変でした。ですが、そのおかげで日常会話はもちろん、商売で使うベトナム語や振る舞いが多少身に付いたのではないかと思います。
私は、家事を手伝うことを条件に格安で住まわせてもらっていたので、ベトナム語の勉強のかたわら、洗濯、買出し、食事の準備、皿洗い、店番など「おしん」のように動き回っていました。当時はつらいと思うことも多くありましたが、今では笑い話のいい思い出です。
日本の良いものを世界に伝えたい
水処理設備会社に興味を持った理由は何だったんですか?
ベトナム語がわかるようになると、日本製の物は良いという話をベトナム人の友達とすることが多くなりました。日本人の誰もが「アジノモト!」と声をかけられたことがあると思います。
そのような中で日本のモノづくりが遠い国の生活を支えているという事に気づき、将来的には海外で日本の技術を、日本の良い物を届ける手伝いが出来る仕事がしたいと思うようになりました。
また、ハノイでの留学生活中に川の水質調査に来ている京都大学の大学院生の方とお会いする機会があり、環境問題では後進国のベトナムで日本の技術が活躍しているのを見て、水環境というのに興味が湧くようになりました。
この私の思いに当てはまる仕事はなんだろうと考えた時に、たどり着いたのが水処理設備会社でした。
五洲興産ベトナムに就職した理由は何だったんですか?
留学から帰国前に水処理設備会社でインターンをしたいと知り合いに話した所、今の五洲興産を紹介して頂きました。帰国まで時間がなくインターンを出来たのは一週間だけだったのですが、当時の営業マネージャーの方がいろいろな現場へ同行させてくれて。恥ずかしながらその時初めて、これほど多くの日系企業がベトナムに進出していることを知りました。
いずれの企業様も良い製品をベトナム国内外に提供するために、日夜工場稼働されていました。そこから出てくる廃水を、正しく処理する仕事を五洲興産ベトナムではやっていました。インターンシップで見学した仕事は、まさに「水処理」で「日系企業」を支える仕事に他ならなかったのです。
そこからは猛アピールでした。水処理に関してはド素人でしたが、「こういう仕事がしたい!」とマネージャーに懇々と伝えました。とても気のいい方だったので、笑いながら「卒業したらおいでー」と返されるだけでしたが、私は本気でした。
そして帰国後、就職先をどうするか考えていた時に、担当の方から「当時の気持ちが変わっていないようなら、うちで就職してはどうか」とお話をもらったときは嬉しかったです。もちろん、二つ返事で働くことになりました。そして、日本の大学を卒業後、再度ベトナムに渡りました。
御社の事業内容について教えてください
弊社は、水処理のエンジニアリング会社として、浄水処理、純水処理、廃水処理設備の設計と施工を行っております。タイ資本の企業ですので、日本に会社はありません。ですから、日本への帰任などはなく、長いスパンでお客様とお付き合いすることが出来ます。タイで約40年、ベトナムで11年と東南アジアの水処理に関しては、経験と実績があります。
他にも、水質分析や薬品供給、メンテナンスサービスなど水処理設備に関わる様々なことをサービスを提供しております。
石塚さんはどのようなお仕事をしているのですか?
私の仕事内容としては、簡単に言うと「お客様のニーズを聞いて、ベトナム人スタッフとともに設備提案をすること」です。
弊社は現在取引先の90%が日系企業様です。お客様が必要としている水質を提供できる機械設備を、ベトナム人技術者と打合せを重ね、日越双方の考え方を尊重しながらより良い設備の提案できるよう努めています。
多くの人に影響されて今ここにいる
建築業界で働くことの苦労はありますか?
建築業界の日系企業の皆様はベテランの方々ばかりですので、どうしても知識不足で苦労することはあります。ただ、知らないことが多いのは事実なので、頂いた意見をノートにメモして、次に繋げられるよう努めております。また、弊社は水処理に特化した会社で有るということ、自分はその分野ではプロで有るという意識を持つことで、誠意を持って落ち着いて自社の設備について伝えるようにしています。
ベトナム人と一緒に働く際にどのように接していますか?
周囲から聞こえてくる声より、ベトナム人スタッフは自分の仕事に責任を持って仕事してくれていると感じています。彼らはプライドの高い側面もあるので、状況に応じて、自分の意見を押し付け過ぎずに、相手の意見を尊重して頼るように心がけています。時折、お国柄か大らかな「抜け」がありますが、そこは日本人の私が細かく確認して修正するように気を付けています。
私が出来る仕事の幅が増えると、ベトナム人社員から「あなた出来るから、あなたがやってよ」と言われることもあるのですが、「その仕事はあなたにしか出来ない、あなたに頼みたい」という事を強調して伝えて理解してもらうようにしています。
といっても、よく口論にはなります。下手に出すぎてもだめだと思います。上司からは「青い」と言われるので、私もまだまだ精進が足りません。(笑)
今後の予定、目標はありますか?
ベトナムにずっといるか、別の国に行くのかはまだわかりません。ただ私の軸として、日本の良い物を海外に伝えたいという思いがあるので、海外で働いていたいと考えています。まずは今、日系企業様とのお取引がメインですので、私の英語力をブラッシュアップさせて他の国籍の企業様にも、弊社の技術力と提案力をより伝えられたらと思います。
若い年代でこれから海外に行きたいという人へアドバイスをお願いします。
海外で働くという事は、その国の文化を受け入れる事が必要になります。けれど、自分が日本人として大事にしている事はブレ無いようにすることが大切だと考えてます。日本人に生まれて、日本の環境で育ったというのが海外ではとても強みに働きます。なので、ベトナムだからいいやと妥協するのではなく、日本人としての感覚、感性を強く持ち続けて居てほしいです。それから「愛想」はあって損しません。ホーチミンの日差しのように明るく振舞っていれば、国籍関係なく、自然と味方してくれる人は増えていくと思います。
ベトナムの若い力に負けない日本の若い世代の挑戦を応援しています。
インタビューの感想
石塚さんと初めて顔を合わせて、こんな若い女性がベトナムの建設業界で働いているのかと驚きました。学生時代にベトナムに留学していたという話に共通点を感じたと同時に、今将来について悩んでいる私にとって、自分のやりたい事が明確でそれを叶えている石塚さんはとても輝かしく思いました。
お忙しい中、お時間を割いて頂いた石塚さんに感謝申し上げます。
取材日:6月2日加藤真友(JAC Recruitment Vietnamインターンシップ生)