ベトナム・ホーチミンで働く日本人インタビュー~CM Engineering 山本さん~
更新日:2016年6月27日 (取材日:2016年5月30日) / ライター: JAC Recruitment Vietnam
日本からの駐在としてホーチミンに来て半年が経つという、山本さん。ベトナムで働かれている日本人としては珍しくエンジニアとしてご活躍中で、ベトナム語も勉強されています。そんな山本さんは、4歳と9歳の娘さんを持つ二児のお父さんで、単身ベトナムにいらっしゃっています。
エンジニアとしてのご経歴からベトナムで働く上で大切にされていることまで、素直な思いをお話していただきました。
“エンジニア”として、家族を残し単身ベトナムへ
ベトナムにいらっしゃる日本人は経営者や営業、IT関連の方が多く、なかなかエンジニアの方にお会いしません。なぜベトナムにいらっしゃったのですか?
転職した会社で、ベトナム駐在の打診を頂いたことがきっかけです。赴任は嫌々ではなくて、いつかは海外でも働いてみたいという思いがあったので、すんなりと受け入れることができました。以前勤務していた会社では、不況の影響で解雇の波が押し寄せていて…自分もその例外ではなかったので思い切って転職しました。結果的にこの判断は正しかったと思います。転職先での海外赴任は想定していなかったので話を頂いた時は驚きましたが、自分を必要とされているということで、やりがいを感じました。
現在はどのようなお仕事をされているのでしょうか?
ベトナムでもエンジニアとして開発に関わっていますが、主にマネジメントの立場で仕事をしています。また、日本本社の要求を聞いたり、反対にベトナムからサポート要請を依頼したりと、日本とベトナムの間に立つことも自分の役割です。設計書の翻訳をすることもありますね。
ベトナムで働くことに対して不安はありませんでしたか?
「行く前からあーだこーだ言っても仕方がない。会社は自分を信頼して託しているのだから、それに応えよう!」という思いでした。ですが、4歳と9歳の子どもがいる点はやはり心配でしたね。家族を日本に残してきているのですが、週末に家族とSkypeでコミュニケーションを取ることが楽しみの一つです。会社からも一定の頻度で日本に帰国できるように配慮を頂いており、とても感謝しています。
日本ではどのようなお仕事をされていたのですか?
大手の日系企業で、ずっと半導体の論理設計エンジニアとして働いていました。チームという形で動くのですが、それぞれに担当が割り振られます。自分の仕事は自分の裁量で取り組むことが出来、フラットで担当機能の実現に集中できる環境でした。担当機能に対するエンジニアのこだわりを突き詰めて少しずつ形にしていくといった感じでしょうか。逆にいえば、現在のように複数プロジェクトを並行してマネジメントする経験はありませんでした。なので、今の仕事は少し新鮮です。
なぜエンジニアの道を選択されたのでしょうか?
小さい頃からコンピューターに憧れがありました。気がつけば理系に進み、大学では半導体やデジタル設計の研究室で勉強しました。その流れで半導体系のエンジニアになりましたね。技術についていくことが必要なので、途中でやめることはできません。
忙しいのは「楽」。それではいけない。
ベトナムで勤務されて半年間ということですが、ベトナムでのお仕事はどうですか?
正直なところ、今は余裕が無いです。会社から託された「ベトナム人が独立してマネジメント出来る体制づくり」を実現しなければならないのですが、まずやらなければいけない業務の対応で精一杯です。でも、忙しいのは「楽」なんですよ。それではいけないと思っています。忙しいことを言い訳にせず、自分のやりたいこと・やるべきことに対して向かい合うべきだと思っています。あとは、(悪い意味で)日本の働き方が身にしみついてしまっているので、ベトナム人の就業時間内に集中して定時で帰る働き方は真似たいですね。
ベトナムで働く上でのご苦労はございますか?
やはり『言葉』ですね。これは言語というより、伝え方の話です。日本は“1言ったら10理解しろ”という文化ですが、ベトナムではそううまく意図を汲みとってもらえません。「言った通りの事だけやって、根本的な問題が解決されていない」時があります。この点は海外で働いておられる日本人に共通する苦労なのではないでしょうか。もう一つ挙げるなら,“正しさ”や”品質”への意識が日本よりも甘いですよね。ベトナム人は仕事自体は早いのですが、正確性への意識が少し足りないように感じます。相手が日系企業の場合は特に信用をなくしかねないので、かなり問題ですね。
ベトナム語を勉強されているということですが、理由はあるのでしょうか?
はい、週に2日ベトナム語を習っています。これはビジネスというより、社内コミュニケーションのためです。ベトナム人と働く際は基本的に”英語”ですが、これはお互い非母国語なのでやはり疲れるじゃないですか?ベトナム人のスタッフには、休憩中は自分の言語をつかってリラックスしてほしいなという気持ちで、勉強を始めました。ベトナム語をきっかけにもっと深く歩み寄れたら良いですね。
とても素敵な心持ちですね!
そんなに大それたことではないですが…。海外で仕事する上で、その国の文化や言語を理解するのは最も大切なことではないかと思っています。
今後への思い
ベトナムでの生活はどうですか?日本に帰りたいという気持ちはございますか?
想像していたよりも良いかもしれません!ベトナム人は明るいですし、物価も安いです。フルーツが美味しいので休日にはフルールジュースを作ったりと、ベトナム生活を楽しんでいます。ですが、子どもの世話を妻に任せきりになっているのを申し訳なく感じますし、やはり家族と一緒に生活したいです。いまは、帰りたい気持ちと帰りたくない気持ちがと半々の状態です。
今後ベトナムで挑戦したいことはございますか?
せっかくベトナムで働かせてもらっているので、それを形にする意味でも「ベトナム・オリジナル製品」は開発したいです。
また、仕事とは関係がないのですが、チャリティ活動にも参加できたらと思っています。一度知人の紹介で孤児院を訪問し、お菓子をプレゼントするという活動をしました。ベトナムは発展しているとはいえ、ベトナム戦争の影響を受けた人や貧しい人もまだ多くいます。なので、そういった人たちに対しての活動もなにかできたらよいですね。
インタビューの感想
“エンジニア”と聞くと、「常にストイックで開発だけに神経を集中させている」という勝手なイメージを持っていましたが、お話させていただいた山本さんは柔軟に環境に対応し、自分の役割を全うされる方で、そのようなイメージが覆されました。特に、目に見える仕事は然ることながら広い視野で仕事を捉え、ベトナムへの理解を深めようとする真摯な姿勢は私も見習わなければと勉強になりました。
お忙しいにも関わらずお話させていただき、さらに温かい言葉をかけてくださる山本さんに感謝申し上げます。
取材:5月30日明石 華奈 (JAC Recruitment Vietnam インターンシップ生)