ベトナム・ホーチミンで働く日本人~Atelier Fine 栗原貴子さん~
更新日:2017年6月28日 (取材日:2017年5月15日) / ライター: JAC Recruitment Vietnam
地元茨城県とホーチミンでトータルビューティーサロンを経営されている栗原貴子さん。茨城でサロンを開いて20年という節目で、ベトナムにもサロンを開くことを決断。この6月には高島屋L2ランジェリーショップ奥に移転するなど留まることのない成長の源についてお話をお伺いしました。
24歳で独立、独立20年目でベトナムへ
どういう経緯でご自身のサロンをオープンする事になったのですか?
昔から、美容師になることが最終目標ではなく、自分でトータルビューティーサロンを経営することが目標でした。ですので、学生時代や下積み時代は独立することに焦点を置いて学んでいました。25歳までには独立するという目標があり、様々な機会に恵まれて24歳で自分の美容室を開くことが出来ました。
なぜ美容室の経営がしたいと思ったのですか?
子供の頃から美容が好きで、物心がついた頃にはよくお母さんが美容室に行くのにくっついて一緒に行っていました。その時に子供心ながら、あそこをこうしたらいいのに、こういうサービスがあったらいいのに、と、考えていて、いつか自分の理想が全部詰まったお店を作りたいと思ったのが始まりです。
どのような経緯でベトナムに店舗を出す事になったのですか?
20年目という節目の年に今後の店舗をどうしようか、私の店の娘達(社員)がどうしたら将来もっと幸せになれるのか、いい仕事が出来るのかを考えていました。そんな時に、ベトナムで店舗を出さないかという話が舞い込んできました。元から海外思考が強くて、海外で働きたいと思っていたのですが、この話を受けるかどうかすごく迷いました。ただ、以前にも1度海外に行くチャンスを逃していて、この機会を逃すともうチャンスは無いと思いベトナムに出店することを決めました。
代表の栗原さん自身がベトナムに来たのには理由があるのですか?
ベトナムに店舗を出すにあたって、私自身が行くのか社員の誰かが行くのかはとても悩みました。ただ、私がよくわからない海外のことを社員に任せて、自分が海外での現状や問題を理解しきれるのかと疑問に思い、まずは私が行ってベトナムでの美容室経営の道筋を作ろうと思いました。
また、私がサロンに長く居るとつい指示を出しすぎてしまうので、他の社員の成長を遅くしてしまうとも感じていたので、もっとみんなが自由にクリエイティブに仕事が出来る環境を作るためにも、日本のお店を今いる社員に任せたいとも思ったからです。
お互いを認め合い、協力したくなる体制を作ることが大事
今はどのような体制で美容室を運営されているのですか?
私を含めて日本人2人、ベトナム人6人の計8人で運営をしています。お客様の割合は、50%が外国人で40%日本人10%ベトナム人富裕層になります。私のサロンはホーチミンの美容価格と比べると高めかとは思いますが、その分品質の高いサービスを求めている人の需要に答えられていると思います。
美容技術は簡単に得れるものでは無く努力の上に成り立つ仕事ですが、どうしても社会的に美容師は高いレベルで捉えられていないのが現状です。私はホーチミンでこれから中身の濃い、満足してもらえるサロンを作り、ベトナム人の美容師さん達に美容業界の価値をもっと高く見てもらえるようにしたいと思っています。
ベトナム人への教育はどのように行っていますか?
ベトナム人はすごく優しくて協力的です、しかし文化の違いからかイレギュラーに対応出来ない面があります。また、日本人だから指導側であるという考えは捨てて、「これも良いね、けど、私はこうして欲しいの」という風に、お願いをする形で説明を多く加えながら教育しています。いつも感謝の気持ちを伝え、お互いを認め合い、社員が協力したくなるような体制をまず作ることが大切だと思っています。
今まではベトナム人の従業員が残って練習をするといことは無かったのですが、「練習をしてもいいですか?」と、自ら訪ねてきてくれた時は、変わったなと嬉しく思いました。
言葉が通じないお客さんとどのようにコミュニケーションを取っているのですか?
大切にしていることは、誠実、正直、一生懸命やることの3つです。
会話としては深い話までは出来ていないけれども、美容は手が語ります。美容を通してコミュニケーションが取れていると思います。そうすると、お客様から相談をしてくれたり、打ち解けてくれるようになりました。今では、サロン以外で会ったりすると、お客様が私を友達に紹介おすすめしてくれています。今回、高島屋の物件が取れたのもお客様が話を持ってきてくれました。
日本と他国でも美意識の違いはなんですか?
プロに対する認識が違うと思います。
日本の場合、お客様にお伺いを立てる事が優先で接客が進むけれども、外国の場合真逆で、今日はどうしたいですか?と聞くと、プロのあなたに任せるわ、今の私には何が必要?というようにアイディアを求められます。
ベトナムに来てから自分の美容感がすごく変わりました。お客様の気持を汲み取って、且つお客様がより綺麗になるようにプロとしてのアドバイスを遠慮などせずに提案をすることが必要であり大切だと学びました。
ベトナムで世界を新たな角度から見ることが出来た
困難にぶつかった時はどうされていますか?
この問題っていったい何の意味があるのかなって考えるようにしています。きっとこういう事をして、学んで乗り越えろ!いう意味なんだな、という風に考え方をシフトしていくと大変なことも乗り越えていけます。
私は人生は必然で、出会いやチャンスも同様だと考えています。なので、後ろ向きに考えるより前向きに考えたほうが自分が楽しいですよね。
栗原さんは元からポジティブ思考だったのですか?
子どもの頃は、わたしは劣等感の塊でした何かを頑張ってしても一番になれない。けれど、仕事は違ったんですよねお客様が指名で戻ってきていただけた時に自分で自分を判断できるので。仕事は本当に自分の好きなことだから大変なことも大変と思わなかったですし、仕事を続けて積み重ねるほどやりたいことが増えていきまいした。その間には辛いこともあったのですが、自分の考えを変えないと、どうすることも出来ないとわかり、ポジティブに物事を考えるようになりました。
ベトナムに来て価値観や仕事観は変化しましたか?
語り尽くせないほどいろんな事が変わり、今までの苦労経験の答えが見つかりました。人の問題じゃなくて自分の問題だったという事に気づくことが出来ました。こうならない、どうしよう、と思ったことは、ならないんじゃなくて、してなかったんだと。物事って変えられる、その変える方法が日本の常識の通用しないこの国で生活していると、多方面で新たな発見や成長、可能性を見つけ出せるようになりました。また、ホーチミンで出会う日本人の新しい友達や仲間達は尊敬する人ばかりで、人から新しい事を学ぶ事もできました。
経営は一人じゃない
栗原さんの目標、やりたいことはなんですか?
人のために生きていきたい、社員にとって幸せな学べる環境を作っていきたい、それを通して日本の美容業界に少しでも貢献できたらと考えています。
人間は経験していない事はわからなくてすごく怖いけれど、行動して経験してみるとそうだったのか、と見えることが大半です。ですので、今後も一歩前に出る勇気をもって、様々なことにチャレンジしていきたいです。
今後の人生プランはありますか?
アトリエファインとしては、育ったスタッフ達にそれぞれトップになってもらってそれぞれがいい環境を作れる人になって欲しい、私がそのきっかけに慣れてアドバイスなどを出来たら良いなと思います。
私自身の今後としては、仕事が私の人生そのものなので、出来る限りの事はやって、社員がそれぞれ良い環境を持てたら、早い段階でハッピーリタイアメントして、今離れて暮らしている夫とのんびり暮らしながら、スタッフの成長を見守っていきたいです。
栗原さんから社員の皆さんに伝えたい言葉はありますか?
「愛してるよ」の一言に尽きます。
私にとって社員は大切な家族です、だから辞めてしまう事が一番辛いです。
社員あっての自分なので、スタッフがいなかったら生きていけないです。
インタビューの感想
「社員がいるから今のわたしが居る」
お話を通して、随所に栗原さんの社員への愛が強く強く感じられて、栗原さんのもとで働いてる社員の皆さんはとても幸せだなと感じました。
また、未開の土地に社員を送り込むのでは無く、自らで道を切り開いて社員が仕事をしやすい環境を作っていきたい、今は大変なことが多いけどそれも全て自分の経験、人生の糧になるとお話してくださった栗原さんは、キラキラと輝いて働く大人の女性ってかっこいい!そう感じました。
お忙しい中、お時間を割いて頂いた栗原さんに感謝申し上げます。
取材日:5月15日加藤真友(JAC Recruitment Vietnamインターンシップ生)