ベトナム・ハノイで働く日本人~ANA ハノイ空港所 吉田典路さん~

ベトナム・ハノイで働く日本人~ANA ハノイ空港所 吉田典路さん~

更新日:2017年8月28日 (取材日:2017年8月10日) / ライター: JAC Recruitment Vietnam

ANAハノイ空港所で今年6月よりご活躍されている吉田典路さんにインタビューしてきました。

整備士というお仕事を選ばれたきっかけや現在のお仕事のご様子、ベトナムでの生活のご様子など様々なお話を伺って来ました。

ANA ハノイ空港所 吉田典路さん

ANA ハノイ空港所 吉田典路さん

吉田さんの現在のお仕事内容について教えてください。

全日本空輸株式会社(ANA)のハノイ空港所で、整備士として働いています。

現在、羽田空港とハノイのノイバイ空港間ではANAの直行便が1日1便就航しており、12:25にハノイに到着し、15:05に再び羽田向けて出発する飛行機の整備を行っています。機体の状況は到着前に情報を受け取ることができるので、飛行機の到着前にはみんなでその情報を共有し、出発を見送った後はその日の便に関するミーティングを行います。また、機材庫内の機材の有効期限の確認や点検、作動チェックなどの基地管理業務と呼ばれる業務も行っています。

今までのご経歴を教えて下さい。

新卒でANAに入社し、整備士として羽田空港に8年間勤務していました。国内線、国際線問わず羽田空港にやってくるたくさんの飛行機の点検と修理作業を行いつつ、一等航空整備士のライセンス取得に向けた訓練や、試験を受けていました。そして9年目でハノイ勤務の辞令をいただき、2ヵ月前にハノイに来ました。

今のお仕事を選んだきっかけはなんですか?

高校までずっと野球をやっていて、大学に入ってからは4年間、ずっとスポーツ用品店でアルバイトをしていました。スポーツ用具メーカーにはグローブやスパイクを作ったり修理したりする職人さんがいました。そういった職人さんの中には人間国宝になるような人もいて、そこで職人と呼ばれる人に憧れ、自分も職人になりたいと思っていました。また、大学では工学部で機械工学を専攻しており、元々エンジニアを志していたので、将来は職人と呼ばれるエンジニアになりたいと思っていました。大学で開催されたANAの会社説明会に参加して話を聞いてからは、航空業界に絞って就職活動をしていました。

コックピットでの整備作業

コックピットでの整備作業

ベトナムでの生活はいかがですか?

ベトナムに来ることが決まって、いろんな人から話を聞いたり自分で調べたりして、ある程度情報を仕入れていたのでそこまで不安も抱いていなかったのですが、実際来てみるとベトナムでの生活はすごく快適です。もちろん会社がサポートしてくれているのはとても大きいのですが、事務所のメンバーもとてもやさしく、何不自由ない生活を送っています。国籍問わずみんな仲が良く、和気あいあいとした楽しい職場で、私が困ったことがあれば相談に乗ってもらったり、おいしいご飯やさんにも連れて行ってもらっていて、仕事終わりや休日に一緒に食事に行くこともあります。個人的には英会話教室に通ったり、ゴルフをしたりして休日を過ごしています。今後、日本人のコミュニティにも参加していきたいと思っています。

ベトナムで働いてみて気づいたことはありますか?

ベトナムに来て、「どうやって飛行機が飛んでいるか」に改めて気づくことができました。

入社時に会社から頂いたパンフレットの整備士の紹介の部分に、「飛行機はエンジンで飛んでいるのではない。みんなの気持ちで飛んでいる。」という言葉がありました。当時は、「クサイセリフが書いてあるなぁ」と思っていたのですが、実際にハノイに来て仕事をしていると、人と人との繋がりがしっかりと見えてきました。それぞれの役割を持った仲間が仕事をしているところを見て、みんなが各自の仕事をきちんと行っているからこそ飛行機が飛ぶことができるということを感じることができるので、1便1便を僕たち整備士でを含め全員で繋げていっている、ということをより実感するようになりました。

働くうえでの日本とベトナムの違いはありますか?

日本で私が勤務していた羽田空港は、便数が多いこともあって600人以上の整備士が働いており、みんなが組織的に動いていました。シートに問題があった場合に旅客部門に連絡する人、パーツが必要となった場合にパーツを準備する人など全てが細かく決まっており、組織化された環境で働いていたので、自分が担当している箇所以外の見えない部分がたくさんありました。ハノイの場合は、整備士である私の隣のデスクには旅客担当の人がいて、その隣にはオペレーションの人がいて、飛行機を飛ばす一連の仕事を全て見ることができるので、そこが一番の違いだと思います。

その分、コミュニケーションの難しさに直面することもあります。整備士同士だと1伝えれば10理解してくれるということもありえますが、整備士以外の人にはもちろん全て説明しなければ伝わりません。また、国が違えば言語の問題ももちろんですが、私たちにとっての普通がこちらの人にとっては普通ではない場合もあります。そのため、“相手にきちんと伝わるコミュニケーション”の難しさと必要性をより感じるようになりました。

今のお仕事の一番のやりがいはなんですか?

飛行機はとても大きく、1人の整備士の力で直せるものではありません。また、私1人が点検できる部分は実はとても少ないです。エンジンや飛行機に搭載されている無数の装置の内部を細部まで毎回見るようなことはしません。私がなぜそれをしないかというと、その作業をしてくれている他の整備士の人がいて、彼らを信用しているからです。飛行機はたくさんの人の責任と信頼の積み重ねで初めて飛ぶことができます。自分が整備士として、その一部になっているということにやりがいを感じています。ハノイから安全な飛行機を送り出すということは、自分一人ではできないことであるのはもちろんですが、自分がいなくてもできないことです。

また、ハノイでは自分が全てジャッジできるというところにもやりがいを感じています。もちろん周りに相談して意見を仰ぎますが、何か問題が起こった時、まず安全性をしっかり確保したうえで、お客様の利便性を考慮し、日本で修復するのか、それとも飛行機を遅らせてでも直す必要があるのかのジャッジを自分が行わなければなりません。さらに、それぞれの飛行機には飛行記録日誌というものがあって、その中に資格を持った人が、「私はこの飛行機が安全だと確認しました」という意味のサインをします。日本の場合はやはり組織化されているので、様々なひとの判断を踏まえたうえでのサインとなるのですが、ハノイでは自分が判断してサインします。そこの責任の重さにも、大変やりがいを感じています。

羽田―ハノイ間に就航しているNH857便

羽田―ハノイ間に就航しているNH857便

 

今後の目標を教えてください。

せっかく飛行機を飛ばす一連の仕事を全て見ることのできる今の環境で働く機会を頂いたので、そこをもっと勉強していかなければいけないと思っています。私はまだ整備についてしか分かっていない部分が多いのですが、整備以外の各部署の仕事や知識を吸収し、整備士として、またエアラインの社員として、飛行機を飛ばすということがどういうことなのかを知らなければならないと思っています。

また、ハノイで私が整備を担当した飛行機は羽田に帰るのですが、私は羽田で働いていたので、羽田で整備士たちが何をしているのか、どう動いているかをイメージしながら働いています。これからもその気持ちを忘れず、次の工程をイメージしながら、ハノイでできることはできる範囲ですべてやって、飛行機を送り出したいと思っています。

整備士は10年で一人前、と言われる世界で、自分はまだまだだと思っています。資格ももっと取りたいですし、やはり“職人になりたい”という思いをもって入社したぐらいなので、これからも多くの経験を積んでどんどんスキルアップしていきたいです。

感想

普段直接会う機会のない整備士の方から、整備士という職業について貴重なお話をたくさん聞くことができました。その中でも、「飛行機はたくさんの人の責任と信頼の積み重ねで初めて飛ぶことができる」というお言葉がとても印象的でした。

“職人になりたい”という強い思いをもって今のお仕事を選ばれ、日々やりがいを感じながら働かれている姿を見て、私も将来、吉田さんのように誇りを持って取り組めるお仕事に就きたいと感じました。

お忙しい中お時間を頂き、ありがとうございました!

取材日:8月10日 坂本詩歩(JAC Recruitment インターンシップ生)

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ライター情報

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JAC Recruitment Vietnam

JAC Recruitmentは1975年に英国ロンドンでスタートした人材紹介会社。JAC Recruitment Vietnamは2013年6月にホーチミンに設立、2015年7月にはハノイに進出。英国・アジア11カ国地域に広がる独自のグローバルネットワークと、東南アジアNo.1のノウハウを活かし、経験豊富なコンサルタントがベトナムにおける日本人の転職活動をサポートしています。ベトナムへの就職・転職をお考えの方はお気軽にご相談ください。ウェブサイト ブログ

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