ベトナム・ハノイで働く日本人~ ANA 幸田英人さん~
更新日:2016年9月23日 (取材日:2016年9月5日) / ライター: JAC Recruitment Vietnam
今回は、ベトナム北部ハノイの「ノイバイ国際空港」で勤務されているANAこと全日本空輸株式会社(All Nippon Airways CO.,Ltd.)の幸田英人さんにインタビューをさせて頂きました。
現在ANAでは羽田空港からノイバイ空港までの直行便が就航されており、幸田さんはその羽田から来た飛行機の点検・整備・確認を行い、安全にハノイから東京に送り出すという重要なお仕事をされています。
幸田さんのご家族は日本にお住まいでありながらも、ご自身は羽田空港からノイバイ空港への直行便が開設した2014年の当初期からハノイに滞在していらっしゃいます。
そんな幸田さんに、ご自身のお仕事内容からベトナム及び海外で働くということなどについてお話を拝聴させて頂きました。是非ご覧ください。
目次
Q.まずはご経歴をお聞かせ願えますか?
入社したのは昭和62年、大学を卒業して、全日空の総合職技術系という職種でANAに入りました。今は名前が変わって、世界で通用する人財という意味で 社内ではグローバルスタッフ職といった言い方をしています。ただ、技術と事務などの文系のお仕事は、仕事内容そのものが変わるので、言葉は変わっても今も「技術系」と「事務系」といったようにも分かれています。
仕事を選んだきっかけとしては、子供の頃から飛行機が好きで、飛行機に関する仕事以外自分の中に全くイメージを持っていませんでした。元々は飛行機のパイロットになろうと思っていましたが、僕らの時はパイロットになるための門が狭かったことや、一般大学の元々自分が好きだった電子工学科に受かっていたこともあり、大学で4年勉強をしてから色々考えて、やはり飛行機の整備士がいいなと思いこの仕事を選びました。
実際にベトナム・ハノイに来たのは2014年の12月でしたので、もうベトナム歴は2年半程になります。他にも、20年前に中国・上海で半年間研修という形で滞在して、2001年から2004年までアメリカのサンフランシスコにもいました。時には関連会社にも出向して貨物機に携わっていたこともありましたが、仕事の内容としては運ぶ対象がお客様と貨物で変わるだけでどの時もほぼ同じでした。その後は日本に戻り成田空港で同じように整備の仕事をしていました。2014年に「ハノイのノイバイ空港に飛行機を飛ばすことになったから、整備マネージャーとして行って下さい」という内示を受けてここにやってきました。
Q.普段のお仕事は主に何をされていらっしゃいますか?
今の職種は、肩書きから言うと「全日空ハノイ空港所整備チーフマネージャー」です。
ここでは飛んでくる飛行機の状況をコンピューターでモニタリングしながら、羽田空港からノイバイ空港に到着してくる飛行機が、今度はハノイから日本に帰るための準備をします。何もなければ、燃料を入れて、コックピットに異常がないかを自分の目で確認する他に、キャビン(客室)が汚れていないか、シートに不具合がないか、テレビがつくかどうかなども含めて、次の便を飛ばすまでのおよそ60分で全てチェックします。
今ここ、ノイバイ空港に到着する弊社の便は、(2016年9月現在)定刻12時15分着で、出発が13時55分発です。 この便と便の間に全ての整備や点検を行いますが、これにはお客様の乗降の時間も含まれます。大体お客様が飛行機を降りるときが15分、搭乗されるときが20分くらいかかり、その間は私たちは一切手が出せないので、実際は60分取れればいい方ですね。ですので、何か不具合などがあったときはすぐに判断して対応しないと出発時間には全然間に合いません。
また、先に述べたように、羽田空港からノイバイ空港への直行便の就航が決まった時に、チーフマネージャーとしてハノイに来たので、ここでの最初の仕事としては事務所の設立から飛行機を飛ばすための準備も行いました。たとえば整備で言えば、整備の事務所を作り、この中にインターネット等のファシリティがないと仕事ができないので、こういうものの準備は担当のセクションがやってくれましたが、それらの準備ができているかどうかを確認や飛行機の部品・工具の事務所内配置等もしました。
Q.ご自身のお仕事で、どういった部分にやりがいを感じますか?
年代やその時の経験値によって、やりがいは変わってきました。でないと何か1つに満足してしまって、その時点で頭打ちになってしまいます。例えば昔だったら、「先輩に負けないくらい早く確実に仕事をこなすようになりたい」でした。そういうことから始まって、他のどんな人がやってもうまく解決できなかった不具合が自分で調べてみて、これではないかと思ったことがぴったり当てはまっていたこととか、そういうときにはこの仕事面白いなって思います。今で言うと、ハノイに来てからは整備らしい整備をすることはないのですが、自分の判断ひとつで飛行機が遅れてしまったり、何百人のお客様に迷惑をかけてしまうという緊張を常に感じる中で、ハノイに来てからの2年間、機材不具合で就航できなくなった事も有りましたが、その他でお客様に不要な迷惑をかけることがなかったということも、ある意味ではやりがいだと思います。
今の自分の立場だと、若手の人に対して賞賛を送る場面はありますが、自分が褒められることはあまりありません。唯一褒めて頂けるのが、お客様です。例えばお客様をご案内する際に、「ありがとうございます」や「ご苦労様です」と言っていただけるとありがたいですし、この間乗ったけど良かったよと言っていただけたりということもありがたいですね。直接お客様に繋がることはなくても、自分がやったことに関して、お客様からフィードバックがあるっていうのは本当に面白いなって思います。
Q.ベトナムに来てみていかがですか?
ベトナムは暮らしやすいと思いますね。これまでに他の海外の国に住んだ経験はありますけど、他と比べてハノイは治安もいいし、食事もまあまあ日本人に向いていると思います。ただ、この天候だけはちょっと暑くてかないませんね。
Q.海外で働く面白さはありますか?
日本だと、管理職の立場であっても「組織の一員」なんですね。で、組織の中で結果を出していく。それは組織の中で働くという責任はありますけど、逆に言えば自分が失敗しても他人がカバーしてくれるという事でもあると思います。それに、シフト制でやっていても自分の代わりの人は常にいます。ただ海外に来ると、代わりの人は居ないし、自分の仕事が1職員や1組織といった領域よりも「ANA」という大きなところまで求められてきます。その緊張感の中で仕事をして、結果を出していき、なおかつ自分の判断で色々やれることも増えてくる。そういったことがやはり海外で働くことの面白さだと思います。
例えば、ある整備士の発案で始めたのですが、通常飛行機が出発する際、日本だと整備士は地上で待機しています。それをここハノイでは、通常の業務が完了していれば飛行機のドア付近で出発のお客様にご挨拶させて頂いています。日本では我々は工具を持つため保安上 お客様との接触を管理されてしまい難しいのですが、海外だからこそ自分たちがお客様に何ができるかを考えながら仕事が出来ることは面白いと思います。
Q.今後の予定や目標はお持ちですか?
同じ機種の飛行機も見た目は同じでも、中身は少しずつ新しくなったりしているので、新しいものについていくためにも、常に知識をリフレッシュしていく必要があります。また、次の赴任地では現在私が持っている飛行機のライセンスに、今後さらにライセンスが必要になるかもしれません。そうなると普段の仕事をしながら勉強を続け、試験完了まで6ヶ月くらいの時間がかかると思います。
それまでに、まず1~2年はハノイで継続して仕事をしていきたいです。ただ、日本に帰るとしてもまた海外で働きたいとは思います。それもここハノイのように、開設(新規就航)のタイミングで、初めて飛ばす基地の準備等で行けたらいいなと思います。
インタビューを終えて
ノイバイ空港での飛行機の整備責任者という重大なお仕事されている幸田さん。表立って私たち飛行機を利用する側の人間に関わることは少ないながらも、責任を重く受け止めて確実に仕事をこなし、私たちが安全に飛行機を乗れるように日々努めていらっしゃるということを、今回のインタビューで見受けさせていただきました。
乗客という立場で感謝の念を持つと共に、20年以上も整備の仕事を貫いて業務を遂行してきた姿勢に敬意を表させていただきます。
ご多忙の中、貴重なお時間を頂戴してお話を拝聴させて頂き、ありがとうございました。
取材:2016年9月5日 石原翠人(JAC Recruitment Vietnam インターンシップ生)