ベトナム・ホーチミンで働く日本人~安立光孝さん~
更新日:2017年10月17日 (取材日:2017年8月30日) / ライター: JAC Recruitment Vietnam
コンピューターメーカーで17年間システムエンジニアとして従事され、製造業における生産管理システムなどの構築を担当。2007年ALSOKに入社され、IT部門の責任者を経て、2014年からベトナムの代表取締役社長をされている安立光孝さん。ベトナムで働くこととなったきっかけや、現在のお仕事などについてお話をお伺いしました。
ベトナムに安全を提供するために
現在はどのようなお仕事をされていらっしゃいますか?
私はALSOKのベトナム事業の代表者として、ALSOK(VIETNAM)とALSOK VIETNAM SECURITY SERVICES JOINT STOCK COMPANYの経営管理をしています。ALSOK(VIETNAM)では、警備機器販売・コンサルティング会社として、監視カメラシステム・出入管理システムや勤怠管理システムの販売や、まったく普及していなかった医療機器であるAEDをベトナムで販売しています。ALSOK VIETNAM SECURITY SERVICES JOINT STOCK COMPANYでは、警備会社としてベトナム人警備員約1,300人を各地に派遣し、日本では既に普及している警備員が駆け付ける機械警備サービスを提供しています。
機器販売・コンサルティング会社と警備会社など業務によって会社が2つあるのは何か理由がありますか?
日本では、会社はどのような仕事をしても良いのですが、ベトナムを含め東南アジアでは、外国人が出来ない業種・業態があるといった法規制が強いため2つの会社になっています。これも東南アジアならではで、法規制とどう折り合いをつけて行くか、その中で外国人がいかに戦って行くか、どうビジネスを広げていくかで、大きなチャンスを掴むことが出来ます。
1,300人もベトナム人の警備員がいて苦労されたことなどありますか?
まだまだベトナムでは、小学校・中学校などの義務教育を受けていない人や、日本のような道徳の勉強などをしていない人が多くいます。そのため、仕事に対して全員が同じような常識を持っているわけではなく、また決められた事ができない方もいます。同じ事を頼んでも個人差が生じてくるため、警備員として入社する際に会社の研修所で集合教育を受けさせてから警備員としてそれぞれの配置についてもらっています。
警備に関してベトナムと日本の共通点また相違点などはありますか?
共通点は2つあります。ベトナムは日本と同様に銃規制があるため、比較的他国よりも治安が良いという点と、警察(公安)の組織がしっかりしているため、何か事案が発生した際に警備員は警察と協力して対応できるという点です。相違点は沢山あるのですが、日本と比較した場合、ベトナムでは内部犯罪の割合が多い、軽犯罪が多いという点ですね。
ベトナムで軽犯罪や内部犯罪が多発している原因などありますか?
様々な原因があるとは思いますが、貧富の差の拡大が大きな原因と考えられます。高級車に乗り大きな家に住む富裕層が増加していますが、いまだに一食100円以下の生活をしている人もいます。他にも、教育水準の低さや盗まれる方が悪いという考え方など様々な事が影響しています。そのため、路上、オフィス、工場でひったくりや窃盗などの軽犯罪が起こります。特に工場ではお金に替わるものが沢山あるので、従業員が盗むという内部犯罪が多発していて監視カメラを設置するなど警備が必要となります。
幼少期から英語を
ベトナムで働かれるまでどのようなお仕事をされていましたか?
17年間、IT業界でSEとして働いておりましたが、英会話が少し出来るということで、アメリカのシリコンバレーに4年ほど駐在していました。その後、ALSOKに転職し日本で7年間ITセキュリティ部門のマネージャーをしていました。再度、海外のビジネスに関われたらと思いまして、海外現地法人の取締役社長の社内公募に応募しベトナムに来ました。
大学で外国語を勉強されていたということで、もともと海外に興味があったのですか?
そうですね。私は全然覚えていないのですが、6歳くらいの頃に祖母と大阪万博に行きました。そこで、外国の来客者に話しかけられて、楽しそうにコミュニケーションをしていたみたいです。その後気づけば小学校2年生の頃から英会話の塾に通い始めていました。そのため、大学も必然的に外国語学科を専攻していました。
日本のサービスをベトナムへ
今後のビジョンなどはありますか?
大きく2つありまして、まず1つ目はALSOKのVIETNAMの事業をさらに拡大させることです。外資規制があったため、ベトナムにおいてALSOKの制服を着た警備員を配置させることは今まで出来ませんでした。昨年、規制が緩和されてローカルの警備会社を買収することが出来、現在は1,300人のALSOK警備員がいます。今後はもっと拡大させたいと考えています。2つ目は、日本の警備のビジネスモデルをベトナムにも浸透・普及させることです。例を挙げると、日本にあるホームセキュリティのサービスをベトナムでも提供できるようにするということです。
今後ベトナムで働こうとされている方にアドバイスなどはございますか?
自身でやりたいこと・目標を持っていること、例えば、日本にはあるがベトナムに無いものを作り上げたいなどというエネルギーを持った方はぜひベトナムで働いて頂きたいと思います。日本に比べてベトナムではインフラもまだ整ってないため生活面で不便を感じたり、給料や待遇も下がったりする可能性もあります。厳しい言い方をすると、日本で何となく働く場所が無いから、海外に居場所を求めてくるようなケースは辞めた方が良いかもしれません。
これから社会に出る学生などにもアドバイスを頂ければと思います。
これは私個人の考え方ですが、まず学生の方は一度日本の会社に入り、最低1年でも良いので日本での仕事のやりかたを覚えて海外に出ることをお勧めします。海外で働くと日本人であるという事だけで利点となることがありますが、日系企業で働く場合は良い悪いは別にして日本式の仕事のやり方を求められるケースがほとんどです。そういう場合には日本式の仕事を身に付けていることがアドバンテージになります。また、英語はビジネスレベルとは言わないまでも、ある程度は出来た方が良いと思います。ベトナムも含め東南アジアの若者はハングリーでかつ向上心があります。母国語以外に英語や日本語など複数の言語を話せる人が沢山居ます。そういったハングリー精神のある同僚と一緒に働く、時には競争するという覚悟が必要です。
インタビュー感想
大変親切な方で、インタビューに的確に答えて下さいました。ベトナムをよりよい環境にするため警備サービスなどを拡大させようとしており情熱をもっている方という印象でした。またお話を聞いて、日本の警備の歴史は50年、ベトナムでは20年弱と言うことを知り、歴史を勉強することの大切さを学びました。日本での学生へのアドバイスの中で、ベトナムの若者はハングリー精神があり、勉強などしているという言葉に私は心打たれ、同じ世代の人も頑張っているので、今後さらに活発に活動しなければと思いました。
安立さん、お忙しい中貴重なお時間を頂きありがとうございました。
取材日:8月30日 來栖詩織(JAC Recruitment Vietnamインターンシップ生)