ベトナムで外国人初かもしれない公務員となった薮下さんインタビュー

ベトナムで外国人初かもしれない公務員となった薮下さんインタビュー

更新日:2014年10月9日 (取材日:2014年9月28日) / ライター: aki

ベトナム南部のバリアブンタウ省のジャパンデスクで働く薮下さんのお話を聞いてきました。なんと所属はバリアブンタウ省人民委員会。正真正銘のベトナム公務員です。ベトナムで日系企業との橋渡し役として日々頑張っている薮下さんに色々とお話してもらいました。

薮下さん

薮下さん

バリアブンタウ省ジャパンデスクでの仕事内容を聞きました

正確な所属は「バリアブンタウ省人民委員会計画投資局ジャパンデスク事務局」。バリアブンタウ省に進出を検討している日本企業や、既に進出している日本企業のサポートをするために作られた部署です。

バリアブンタウ省人民委員会

バリアブンタウ省人民委員会

役割は大きく分けて3つがあり、一つはバリアブンタウ省のPR。もう一つは日系企業と政府の橋渡し役。最後は日系企業に関する問題をサポートすることです。2011年に野田首相(当時)とベトナムのズン首相が、国際的港湾を持つ北部のハイフォン省と南部のバリアブンタウ省に日系企業を誘致すると合意したこともあり、バリアブンタウ省では日本のみがこのようなデスクを持っています。ちなみにFDI(Foreign Direct Investment/海外直接投資)額としては日本は米国、カナダ、タイ、韓国に次いで第5位となっています。

つまり、ジャパンデスクを通じて日系企業を誘致して、ベトナムの裾野産業を育成するという仕事に従事されています。

バリアブンタウ省の魅力を聞きました

バリアブンタウ省の魅力は観光と経済です。

観光はブンタウのビーチ、ホテルが有名で、海産物も多くとれています。また、元監獄だったリゾート島コンダオ島もあり、こちらは外国人観光客も多く訪れています。最近ではザ・グランド・ホーチャム・ストリップに代表されるような大型リゾート施設も増えています。バリアブンタウ省には毎年1,000万人以上の観光客が訪れています。

ブンタウ市

ブンタウ市

経済としてはインフラ、天然資源、人的資源が充実していることがバリアブンタウ省の魅力です。

インフラでは、2014年頭にはホーチミン – ザウザイ高速道路の一部開通により、国道51線を利用してホーチミン市から1時間半の距離にあります。ベンルック – ロンタイン高速道路も着工し、ホーチミン市から近く、便利になっています。2025年(予定)にはロンタイン国際空港が開港する予定となっており、バリアブンタウ省から空港へのアクセスも非常に良くなります。そしてカイメップ・チーバイ港はベトナム最大の水深16mを誇り、ベトナムで唯一北米及び欧州への直行貨物便を運行しています。

カイメップチーバイ国際ターミナル

カイメップチーバイ国際ターミナル

バリアブンタウ省は天然資源も多く、石油、天然ガスの埋蔵量がベトナムで最大(石油・天然ガスの埋蔵量が、それぞれ国内の93%・16%を占めている)であり、更にダデン湖から工業団地へ水路を引いておりきれいな水を潤沢に利用できます。これら資源が豊富なので電力の国内総生産量の17.5%がバリアブンタウで生産されており、電気料金は他国に比べて安くなっています。重工業企業が多く進出しており、日系企業では新日鉄住金、双日(発電所)、住友商事(小麦粉や建設、発電所)、共英製鋼、東京電力・九州電力、INAX、エアウォーター、日本板硝子、旭硝子など15社以上が進出しています。

最後の人的資源、これはホーチミン市には及ばないのですがベトナムトップ5に入る職業訓練校があり、そこでは日本語や5S教育などを受けた人材が毎年700人輩出されています。

これらのインフラが揃っているというのはベトナム国内だけでなく、近隣諸国を見ても多くはなく、日系企業の進出先として現在注目を集めているのです。

バリアブンタウ省で働く事になったきっかけを語ってもらいました

「ベトナムに来たのは約1年前の2013年12月、Facebookでブンタウ大学が日本語教師を募集しているというのを見て飛びつきました。「日本語を勉強しているのに日本人の先生がいない」という状況をどうにか助けたかったからです。」と語る薮下さん。日本では「情報がない人を助ける」という思いで地方の人達をターゲットとしたオンライン予備校に関わっていたことや、日越の架け橋となるという仕事内容が子供の頃の夢だった外交官に近いということもあり、すぐにメッセージを送り、採用されたそうです。

「その後は外交官気分で働いていました。学生たちの自発性を引き出そうと日本祭りをやらせてみたり、夢を見せるだけではなくて日系企業の仕事を紹介したり。そうした仕事をしていたため、日本企業をサポートするような依頼も増えてきました。」

生徒たちと薮下さん(中央)

生徒たちと薮下さん(中央)

その後、JICAの方の紹介でジャパンデスクの担当者にならないかという話があったそうです。子供の頃に描いていた夢には建築家もあるそうなのですが、「バリアブンタウ省のコンセプトを設計して形作っていく」という仕事がそれに通じるところも多く、その仕事に応募しようと決めたそうです。しかし就職先はベトナムの地方政府。当然ベトナム語での公務員試験の受験はできません。そこで彼が大学講師としてこの地で働いていたことで得た多くの人たちの助けをもらったそうです。まずは人民委員会に採用してもらうよう働きかけ、人民委員会がOKとなっても雇用契約には共産党の承認が必要ということで次は共産党に働きかける。そうしてJICAやバリアブンタウ大学学長、そして共産党方面からも推薦状を頂くことができたそうです。既にその地で多くのベトナム人から信用されていたからこそそのポジションに就けたということでしょう。

「学生時代に読んだ本、「君の思いは必ず実現する(稲盛和夫/2004年)」を読んでから自分の夢は全て叶えたいと思うようになった」。「(夢に描いていた)職に拘るのではなく自分のやりたいこと、コンセプトにこだわって夢を叶えながら、いい仕事ができるように精一杯頑張りたい」

まだ仕事は始まってばかりで勉強ばかりと話していましたが、バリアブンタウ省についての話をするときはとても輝いており、とても豊富な知識で色々と教えて下さり、仕事への強い情熱を感じました。これからも日本企業とベトナム政府の架け橋として、日系企業の進出及びベトナム裾野産業育成に向けて頑張っていくそうです。

お話しした感想

バリアブンタウ省で働く薮下さん、もともと友人の紹介で知り合ったのですがとっても気さくで元気の良い方でした。「今まで諦めてきた夢を叶えていける、そんな人生にしたい」と語っていた薮下さん、今後は当サイトでブンタウからコラムを発信することになっているので、ブンタウコラムも楽しみにお待ちください。

ライター情報

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aki

旅をするように生きていたい、そう思っていたら気づくとホーチミンにいました。本業の傍ら、ベトナム観光・生活情報ナビ、Samurai Cafe Saigonをやったりしています。ベトナム・ホーチミンから、日本とは一味違うベトナムの日常をお届けします。

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