ベトナム・ホーチミンで働く日本人~ STARMARK 林正勝さん~

ベトナム・ホーチミンで働く日本人~ STARMARK  林正勝さん~

更新日:2016年9月13日 / ライター: JAC Recruitment Vietnam

日本のよいものを世界へ 世界のよいものを日本へ
伝統のよいものを現在へ 現在のよいものを伝統へ

リクルートから起業され、2004年にSTARMARK HOLDINGS PTE. LTDを設立された代表の林正勝(はやしまさかつ)さん。ベトナム人に日本文化を伝えたいと、2016年8月7日に新しくオープンした“agataJapan.cafe”。そこに込められた思いと林さんの人生について、熱くお話いただきました。

林正勝(はやしまさかつ)さん

林正勝(はやしまさかつ)さん

目次

起業までの道のり

Q. 学生時代から“起業”には興味を持たれていたのですか。

大学生活では縁があって会社を立ち上げ、社会に触れる機会があったので、仕事の面白さを学生のときに知ることができました。その延長線上でベンチャー企業に就職という選択肢も考えたのですが、やはり一度社会に出て、社会の構造を学ばないと小さい人間にまとまってしまうと思い、企業に入ることを決めました。学生ながら多くの社会人の方のお話を聞く中で、最も魅力を感じたリクルートに入社しました。

Q.なぜ学生時代の過ごし方としてビジネスの道を選ばれたのですか。

元からビジネスをやると決めていたわけではありません。高校時代にアルバイトができなかったというのもあり、大学では20~30種類のアルバイトを経験しました。その一方で、バンド活動もしていて、CDを出そうとしたときにどうしてもお金が必要になりました。そこでバンドの宣伝のために、当時はめずらしかったホームページを作成したところ、webコンテンツ作成の依頼が入るようになったのです。ビジネスの道を歩むようになったのはそのころからですね。

様々な企業の方の話を聞く中で、「一人前になるには、10年はかかる。」と言われ、10年は自分の人生にとって長すぎると考えた林さん。そのときリクルートの方が話された「お客様にとっては1年目も10年目も変わらない。初日からプロとして働くべき。」という信条に学生ながらもプロとして仕事をこなしていた林さんは深く共感する。

Q. 自分を成長させるためにリクルートに入ったのですね。

はい、そうです。リクルートは正直辞める理由がないほど恵まれた会社でした。でも、リクルートには30歳という節目で早期退職制度があり、自分のキャリアについて見直す機会が来ます。その時に、自分はリクルートという会社で出世していくキャラクターではないと思いました。自分の性格にはそういう道は合わないと感じたのです。そこで退職という道を選択しました。そして、退職するのであれば、リクルートができないようなことをしようと決意しました。競合したくなかったのです。競合してしまうのは寂しいじゃないですか。そこで私が考えたのは“文化・伝統”です。この部分は、リクルートに合うサイズやスピード感ではないと思いました。

Q. なぜ“文化・伝統”という発想に至ったのでしょうか。きっかけはあったのですか。

学生の頃に海外へ行く機会が増え、日本文化の大切さや素晴らしさを感じるようになりました。その時に日本を知ってもらうには日本の文化を紹介するのが一番良いと気付きました。それ以来「日本とはなにか、日本の強みはなにか」ということを真剣に考えるようになりました。

文化や伝統が受け継がれるということ、それは「平和である」ということです。文化を大事にするということは平和に繋がるし、平和だから文化が発達するのです。幕府は変わっても天皇は変わらないという意味では、日本は昔から今までずっと平和な社会が続いています。その象徴として、“老舗”と呼ばれる100年以上続く会社が2.6万社(※中国は1桁、韓国は0社)、1000年続く会社は5社もあります。これはとても素晴らしいことですよね。それにも関わらず日本人はこの事実を知らない。私は、このことをもっと日本人に知ってもらい大事にしてほしい、そして最終的には、世界の人々に知ってもらいたいと考えています。

Q. 日本の文化や伝統を伝えるというと、NPOや政府機関等さまざまな選択肢があるとおもいます。なぜビジネス・起業という形を選んだのですか。

NPOなどのイメージは湧きませんでしたね。外から応援するのではなくて、一緒になって考えたいと思っています。外から宣伝や応援をすると喜ばれるかもしれませんが、お金にはならないですよね。そうではなくて、文化・伝統を買っていただくことでそれを存続させることが必要だと考えています。なので、会社としてこの事業を立ち上げました。

ベトナムでの事業

Q. 2013年にベトナムへ進出されていますが、どのような事業を展開されているのでしょうか。

最初に日系商品のみ扱う通販サイトを立ち上げました。様々なものを販売しているサイトはありますが、オールジャパンにこだわっているのは弊社だけですね。現在では220ブランド・2000アイテムを扱うまでになりました。ですが、消費者に日本を実際に体験してほしいと思うようになりました。これは通販サイトではできないことです。そこでリアルの場を提供するために“agataJapan.cafe”を今年の8月に開店しました。

“和”をコンセプトにした“agataJapan.cafe”

“和”をコンセプトにした“agataJapan.cafe”

Q. 日本を伝える方法として、“食”に焦点を当てた理由は何ですか。

日本の文化を伝えるためには、“食”がシンプルでわかりやすいと考えたためです。食べたら、美味しいか?美味しくないか?がすぐにわかります。ですので、まず“食”という点から、日本を好きになって欲しいと思いました。

また、“抹茶チョコレート理論“という考え方を常に頭の中にいれています。 ”抹茶“は日本人にしか馴染みのないものですよね。でも、”チョコレート“はベトナムの人にとって身近なものです。文化距離が1つしか違わないので、ベトナム人にとって”抹茶チョコレート“はぎりぎり許容範囲なのです。一方、”抹茶ようかん“は、”抹茶“も”ようかん“も両方日本のものですよね?これは文化距離が2つも違うので、ベトナム人にとっては許容できない範囲なのです。

“agataJapan.cafe”のメニューにもある「だし茶漬け」も、“抹茶チョコレート理論”に基づいています。
チョコレート:パクチー(みつばの代替品)、ピーナッツ(あられの代替品)
抹茶:だし(にんべんのかつおぶし)
このように、ベトナムの要素を取り入れることによって、ベトナム人でも親しみが持てるぎりぎりのラインを狙った商品作りを意識しています。

“agataJapan.cafe“の看板メニュー「だし茶漬け」

“agataJapan.cafe“の看板メニュー「だし茶漬け」

今後について

Q. 「agata構想」について教えて下さい。

弊社では、「agata構想」と呼ばれるプロジェクトを立ち上げています。“agata”というのは県(あがた)から来ています。このプロジェクトは日本47都道府県の良いものを世界195か国に届けていくというものです。プロジェクトの最初の段階として、商品の都道府県数を増やすことを目指しています。例えば、“agataJapan.cafe”で今月は秋田県の商品を取り上げていますが、来月からは青森県の商品を取り上げます。そして、次の段階として、195か国に情報だけでも届けることを目標に、クロスボーダープレミア層を対象としてオールジャパンの通販サイトを各国に立ち上げたいと思っています。現在は香港、ベトナム、シンガポールに進出していますが、年末から来年にかけてタイで立ち上げる予定です。

※クロスボーダープレミア層
「英語ができる人(一定の教育水準が超えている人)」「インターネットが使える人」「クレジットカードが使える人」この3つの条件を満たしている人たちを指す。
クロスボーダープレミア層の人たちはある程度お金持ちで、英語表記でも読むことができ、ネットで商品を見て、クレジットカードで買うことができる。

Q. 「文化・伝統」とは全く異なる事業を立ち上げることは考えていないのですか。

それはないですね。残りの人生を考えたとき、195か国制覇するためには1年で4ヵ国くらい回らないといけないからね。今までの軸はぶれないです。それに、スタッフやパートナーをはじめ応援して下さる方まで多くの方々に支えられているので、その方々の期待や信頼を裏切らず、応えられるように責任をもって最後までやると決めています。

Q.多くの方に関わっていただくということは、責任や信頼が重くなり、自分の時間に対する自由度がなくなると思いますが、負担に感じないのですか。

それは、自由をどのようにとらえるかだと思います。私はやりたいことをやることができているので、魂は自由です。自分の人生は自分にしか決められないので、人に頼ることはできません。だから、自分の楽園は自分でつくるしかないですよね。私の場合、幸いにしてそういう志の近しい人が周りに多く集まってくれていて、いま、こういう仕事ができています。自分一人では絶対にできないことなので、とても感謝しています。また、それを理解してくれるお客様がいて、支援をしてくださるパートナーがたくさんいらっしゃいます。責任が重いということに対しては、不自由かもしれないですが、目指すべきものが見えているのは幸せかもしれないですね。

Q. 常に淡々と話されているように見えますが、悩まれることはあるのですか。

考えることは多いですが、悩むことはないです。「悩むのって無駄だよ。考えろ。」これはリクルート時代の上司に頂いた言葉で、それに納得しました。悩むのはどうしようどうしようって思うだけじゃないですか。それをしたところで何も解決しない。そのため、あまり悩んだり迷ったりするということはないです。

Q. 直観や勘で行動されることはあるのですか。

直観で行動していますよ。アジアは理屈ではないので、ある程度ちゃんと計画も立てますけど、それに縛られて直観を殺すことはないですね。例えば、ベトナムに進出するタイミングとか、開店するタイミングとか、絶対的な答えがあるわけではないですから。自分が今だと思えば今がいいということだと思います。

Q. 林さんにとっての「幸せ」とは何ですか?

日本の幸せ。日本の職人さんや文化が存続していくことが幸せ。ひいては、世界の幸せ。私がこのように日本の文化を紹介しているのは世界に日本の良さを知ってもらいたいからです。要は、「日本は良い国だから、戦争をするのやめよう。」となってほしいということです。例えば、政治的に問題があってある国とけんかしていたとしても、その国の食べ物や文化を嫌いになる必要はないわけです。政治は政治で政治的なルールがあるから仕方がないですが、私は文化を交流させることによって平和な世界を作りたいと思っています。私の将来の夢は、日本の良いものを195か国に出していくという一方通行のものではなく、各国の良いものを日本に持ってくるだけでもなく、195か国の良いものを195か国に届けたい。これが叶ったら幸せですね。

日本品質の商品のみを扱う通販サイト“agataJapan.com”

日本品質の商品のみを扱う通販サイト“agataJapan.com”

インタビューを終えての感想

現在、ベトナムでオールジャパンの通販サイト“agataJapan.com”を開設され、ついに「日本を体験できる」をコンセプトにした、“agataJapan.cafe”を開店された、林さん。その背景には、林さんの日本文化・伝統に対する熱い想い、そして世界平和に対する壮大な希望が込められていました。今回、インタビューをさせていただくなかで見えてきた林さんの姿は、日本の誇りを忘れない、日本人のなかの日本人でした。日本の伝統・文化を守るということは、日本の歴史を紡ぐこと。だから、私たちは今からでも日本についてもう一度見直して、日本の魅力を再認識しなければならない。そして、それをこれからの世代に私たちが教えていかなければならない。林さんのお話を聞き、そう強く感じました。毎日日本・全国各地に飛び回られている林さん、今回は、大変お忙しいところ、貴重なお時間いただき、誠にありがとうございました。

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ライター情報

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JAC Recruitment Vietnam

JAC Recruitmentは1975年に英国ロンドンでスタートした人材紹介会社。JAC Recruitment Vietnamは2013年6月にホーチミンに設立、2015年7月にはハノイに進出。英国・アジア11カ国地域に広がる独自のグローバルネットワークと、東南アジアNo.1のノウハウを活かし、経験豊富なコンサルタントがベトナムにおける日本人の転職活動をサポートしています。ベトナムへの就職・転職をお考えの方はお気軽にご相談ください。ウェブサイト ブログ

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